ゼロ章 侍道化と闇勇芸団 その3
「キモいんだよ、お前! 角生えてて!」
「死ねよ、役立たずのゴミが!」
「陰キャの癖にイキんな! 能無しの癖に!」
「美の区の恥が! 存在がうざいんだよ!」
「サイコパス野郎! 刀を持つな! 化け物の癖に!」
美の区の村近くの村にて、一人の子供が、複数の子供たちに踏みつけ、罵られていた。やがて飽きたのか、その場を移動したが、子供達は去り際に少年に唾を吐いた。打撃で傷だらけの少年はしばらくしてから、起き上がり、黒い和服から埃を払う。
「あいつら全員、身ぐるみ剥がされてから人狼に喰われればいいのに…。」
少年はずっと被っていた黒いターバンを整え、家に向かって歩き出した。褐色の肌は傷が目立ちにくい。岩本の家は町外れにあるので誰も近づかない。なので少年は誰かが門の目の前に誰かがいることに驚いていた。
「…おお、括正ちゃん。今帰ったのかい?」
「……! 和泉君か! 数週間振りだね。」
二人の友人は抱き合った。
「括正ちゃん、酷い状態じゃん。誰にやられた? ぶった斬ってやるよ。」
「いいよ〜。いつか強くなって自分でボコボコにするよ〜。それより何しに来たんだ?」
岩本 括正は質問すると、和泉はビシッと括正を指差した。
「何を隠そう。君を闇勇芸団の新しい団員に誘いに来たんだ。」
この発言に括正はポカンとしていた。
「闇勇芸団? なんじゃそりゃ?」
「君瓦版とか見ないの? ってかなんで城に勤めてるのに知らないの?」
「なるべく人目のつく場所は行きたくないし、仕事以外で人と関わりたくない。」
「まあ、括正ちゃんはそうだよね。僕は君の角も蹄もモフモフも好きだけどね。」
「…あっ、ありがとう。」
括正は少し照れると、話を戻す。
「で、その闇勇芸団になんで僕を?」
「じれったーい!」
茂みの中から、煌才が姿を現した。括正は当然ビビる。
「ぎゃあああ!」
「無駄に声がデカいガキだな…。」
隣から氷吾が出てきた。括正は当然ビビる。
「ぎゃあああ!」
「おお! ワンダフルな肺活量! 歌も歌えそうだな! 気に入った!」
煌才は括正にサムズアップをした。即座に氷吾の方を向く。
「なぁなぁ、いいよねこいつ。団員として見込みあるよ。」
「どうだかな。……こいつは早死にして捨て駒にもならんかもしれないぞ。」
「あぁ⁉︎ てめえ俺様の何を知ってるんだ、透かしクールマン!」
(出たぁー! 括正は怒ると口調が変わるんだった。)
和泉はそう思っていると、氷吾は冷静に答える。
「知ってるとも、侍道化。」
氷吾は固まった括正を観察しながら、話を続ける。
「美の区には他と比べて、介錯や処刑を直接行う者が極めて少ない。ましてや、ガキの介錯処刑人なんて一人だけだ。道化のお面と役職を始めたばっかでの公の場での挙動的な首斬りから、侍道化と呼ばれるようになった。」
「人前で緊張してたんっすよ。」
「そんなことより、闇勇芸団入ってよ〜。」
煌才が言った。
「ってか岩本君は処刑や介錯って楽しいの?」
「……楽しくない。」
「じゃあなんでやってるの?」
「……誰もやりたがらない仕事なんで。たまに悪夢にうなされるけど、言い訳を考える暇があったら重荷は背負いたい。」
しばらくの間、沈黙が流れた。沈黙を破ったのは煌才だった。
「気に入った。俺は山内 煌才。団長と呼べ。闇勇芸団の道化となれ!」
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