ゼロ章 侍道化と闇勇芸団 その4

 舞台も時も変わり、数日後のいくさ

「氷吾殿はすげえな。僕の代わりに長期出張の手続きをすんなりしてくれるとは……。」

 括正は感心していた。和泉は頷いていた。

「うんうん。この兵団のみなさんはみんなすごいさ。少ないけどね。」

 和泉は手で人を示した。

「あちらは弓や銃などの遠距離攻撃の使い手 ― 鷹狩りの狩野 上之介さん。魔物から村を守ったこともある英雄だ。鞭を持っている御仁は獣使い ― 獣屋 学さん。鞭や陽動で敵を惑わす。そちらは花火師の火村 球郎さん。火薬で敵を追い詰める。括正ちゃんと似て黒づくめのあの人は元忍びの碁石さん。この団員だと一番速くて、クナイはお手の物。あのデカい人は農民の平六さん。長槍を振るう剛腕の持ち主で、武士を目指してるんだって。あちらのご老人は竹内 忠時殿。引退していてのどかに暮らしていたが熟練された技や経験を見出され、団長と副団長が何度も加わるように嘆願したんだとさ。あちらの壮年は北時 武衛殿。城で働く方だったが、殿様の胸ぐらを掴んで、追い出され、自ら闇勇芸団に志願した玉乗りの達人。あちらは独学で忍術を学んだ元町人の根津さん。碁石さんにも引けを取らない腕の持ち主。そして団長と副団長と僕。最後のメンバーは君だ。あっ、噂をすれば。」

 偵察から煌才と氷吾が戻ってくる。

「よし作戦言うぞ。集合。」

 煌才が言うと皆が集まった。

「学は和泉と手を組んで陽動。碁石と根津は中枢の混乱を頼む。平六は俺とバディ。氷吾と忠時殿と武衛殿は斬り込み。球郎と上之介はいつものように遠くから敵を撃ちまくれ。括正は二人の護衛。オーケー?」

『オーケー!』

 括正は球郎と上之介に着いていくことになった。

「球郎殿、上之介殿。よろしくお願いします。」

「……よろしくな。」

「おい、道化!」

 球郎は括正に詰め寄った。

「俺の火薬には触るなよ。火傷じゃ済まないこともある。」

「了解です。」

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