ゼロ章 侍道化と闇勇芸団 その5

 戦いの火蓋が切って落とされてから、数時間後。氷吾の計算より長期戦になった。つまり少々劣勢だ。

「クソォ! さてはあちらは魔術師を雇ったな! 思ったより骨がある!」

「氷吾。ワシが粘ってるんじゃ。お主が根性みせんでどうする!」

「くぅー。ですが忠時殿。退却も一つの手かと…」

「あちゃあああ! あちいいよおお!」

「「「……え?」」」

 三人の武士は目を疑った。敵に対して闘争心を燃えている彼らに比べて小さな兵士が物理的に燃えながら、彼らを通り過ぎた。最初に正体に気づいたのは氷吾だった。

「……! あの道化のクソガキ!」

「ハァ…ハァ…すいやせん。氷吾さん。」

「球郎、お主がどうしてここに?」

 忠時は花火師に問い詰める。後から駆けつけた上之介が事情を説明する。

「括正君が誤って球郎殿の火薬を触ってボンバー。」

「上之介、お前前から思ってたけど、説明雑。」

「これは失礼。天才軍師の氷吾さんが理解できないの?」

「あぁ?」

「ちょ、上之介君煽らない。氷吾殿も喧嘩買わない。敵に喧嘩売って!」

 武衛は戦いながら上之介と氷吾をなだめるのだった。皆が器用に戦いながら会話をする。老兵の竹内 忠時は見逃さなかった。

「皆、この戦が終わった後、岩本 括正を称え感謝することを勧める。見えぬか? 勝利の活路が開いたぞ!」

 忠時は刀で前方を示した。武衛は唖然としていた。

「戦場の予想外ののせいで…」

「想定以上の大混乱だね。」

『団長!』

 氷吾と忠時以外は突然現れた煌才に反応した。

「逃げたり、火傷する兵士がちらほら。……道化がカオスを呼んでくれた! 気張るぞ!」

『おおおお!』

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