ゼロ章 侍道化と闇勇芸団 その12
(副団長……団長…。)
括正は二人が眠る場所に戻っていた。無意識に涙目になっていた。
(時間を掛けてもいい。全員安らかに天国に導かれるように埋葬しよう。)
「括…正…」
「…! 団長!」
(生きてる⁉︎)
括正は近くまで駆けつけて、しゃがんだ。声が聞こえる。
「俺の…僕らの冒険は…ここまで…みたい…。」
「何をおっしゃいます、団長。まだ生きてもらわねば。美空は…追い詰めましたが、トドメを刺していません。生死はわかりません。一緒に生きて、今度は確実にいつか奴を共に倒しましょう。」
「ふふ…。」
煌才は微笑んだ。
「大丈夫。もう奴の…負けだ。ここからでも…君の殺意…奴の君に対する恐怖は充分伝わった。彼は生きていたとしても…もう…恐怖で…君には立ち向かえない。闇勇芸団の…勝利だ。」
「あっ…あなたが死んでしまっては意味がない。うう…。」
括正は泣くのを堪えようとした。それに気づいた煌才は震える手を動かし、括正の頭を撫でた。
「ごめんね。団員の中で一番繊細な君をおいて…この世を去ること…とても悔しい。君が今、そしてこれから背負う苦しみを思うと、君を団員として迎え入れたことが…」
「それは間違ってません。」
括正は煌才の言葉を遮った。
「僕はあなた方を通して仲間の温もりを知ることができた。今苦しいのは、あなた方の優しさがすごく温かったから。あなた方に背中を預けた思い出、騒いで楽しんだ思い出、訓練をした思い出、今のこの痛み。全部宝です。この岩本 括正、闇勇芸団に入ったこと、一切悔いておりません。出会いに感謝です。」
「そうかい。」
煌才は再び微笑んだ。
「団長としての最後の命令。っていうかお願い。…しばらくの間、君の心に平安が戻り、精神的に成長するまで、僕らのことは忘れなさい。埋葬もしなくていい。…でもできれば時間が経ったら、僕らを思い出してくれ。笑うもよし。泣くもよし。……あっ、でも和泉は埋葬したら? 彼は君のもう一つの家族に出会う前からかけがえのない友だったのだから…。」
煌才はそう言うと、目を閉じて息を引き取った。括正は立ち上がり、とぼとぼ歩き出す。
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