第4話 半分しか食べられない…かも知れない。
今更ですが。そもそも、『王都総合ギルド』とは?
冒険者と言われる、魔獣や盗賊を討伐したり、森に分け入って貴重な薬草を採取したりする手練の自由業と、独自の力で売り買いをしたいという商人達と、依頼者を繋ぐものである。
かつては冒険者ギルドと商業ギルドに分かれていたが、それはもう洒落にならないなんやかんや…まあ、国を割るような騒動が起きた。
そんな訳で今は半分国営、半分は有力冒険者と豪商達市民側が運営し、総合ギルドとして統合化された。
国側からは、今は王弟と宰相家、市井からは冒険者の高ランク爵位持ちと豪商から、また、中立の相談役として教皇がそれぞれの団体から選ばれる。
運営は完全合議制。神託が降りる事もある。不正の度合いによっては、いにしえの昔、神罰が降りた事も。
そもそも、このギルドは世界に平和をもたらした、勇者・賢者・剣聖・聖女ら英雄達とその後援者らが設立したもので、権力との癒着や人員の腐敗を撤廃する為、それぞれを司る神の協力を得て今日の形に成ったとのこと。
……昔はお偉いさん達がやばい人達だったから、物理的挿げ替えで物騒な処理が、なんやかんやあったのではと思われる。
そんなギルドで、私は厄介事とは無関係な一般職員を目指していたのに、なぜか幻のチームに入れられてしまった…。前世とか要らない、平凡が欲しい…。
「……ハァー。」
重点教育対象のシーダが提出した、ギルドの歴史レポートを見てたのに、気がつけば鬱々としてしまったわ…。いかんいかん。
総合ギルド受付カウンター奥、総務部の机で色々業務を処理しつつ、ため息が出てしまう。
「おーい!座敷童子ちゃーん?元気かいっ?」
げんなりしながら仕事をしていたら、私をよくご指名して下さる、ベテラン冒険者のダクトさんがお出でになった。
「まぁ!ご無沙汰しております!どうなさいましたか?」
慌てて、窓口カウンター横のスイングドアで手を振るダクトさんに駆け寄る。
相変わらず、渋くて素敵ぃ…!!
「おう!今大丈夫か?ちょっと鑑てもらいたいもんができちまったんだが…。」
にかっと笑って、肩の背負い袋をポンポンって軽く叩いた。マジックバッグ…かな?
ああ、イケオジのやんちゃ笑顔、プライスレス…!
「ええ、承ります!こちらへどうぞ。」
私もニッコリ笑顔をお返ししつつ、鑑定室へとご案内した。
☆
ダクトさんとは、実は魔法学院の頃からのご縁。
学院では、私のような“体力体術素質なし人間”でも、実習でダンジョンや魔獣の森などへフィールドワークに行かねばならない。
そこで、冒険者などを同伴する事が許可されるのだが、ミソッカスとはいえ私はフォルチュナ家。過保護なお父様たちの力で、なんとシルバー階級冒険者を護衛に雇ってしまったのだ。それがダクトさん。
(ちなみに、ミスリル、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズ、アイアンの階級があります)
私のような者に貴方は勿体ない、無理に引き受けなくていいと何度も言ったのだが、何やらダクトさんの方もフォルチュナ家との契約は破格の待遇だったそうで、むしろやらせてくれとお願いされた。
そこで私の、家での立ち位置とか目指せ独り立ちだとか学園内の色々だとか、保護者として大変お世話になりまして。私、ダクトさんがお父さんだったらよかったのにな…。
今思えば、前世の父親に似てるかも…?こんなにイケオジじゃなかったけどね!
それはさておき。
この…私の腕くらい太さがある、ブーメラン形の物が何本か集まってる、黄色の、房!
「あの……これ、もしかして?」
「おう!その、もしかしてだぜ!」
楽しそうにニコニコしながら、私に鑑定依頼したそのブツは……
「さっちゃんがちっちゃい頃から探してたんだろ?この、ナーババ!!」
大きさ以外は、大体似ていますね、バナナに…。
★★★★☆★★
何でバナナ…いや、ナーババ?を持って来たのかと聞いてみましたところ。
今回、私の愚兄がいるパーティ“幸福の担い手”の助っ人として、南方にできた密林ダンジョンの調査に行ったところ、この植物?をドロップしたモンスターがいたらしい。
魔道具で簡易鑑定したところ、ナーババという名前の食用可能果実であることが判明。
愚兄が、「こっこっコレェェェェ!!!サティが言ってたやつぅぅぅぅぅ!!!」と暴走。モンスターを根絶やしにする勢いで狩りまくり、マジックボックスの容量Maxにしたらしい。
調査はまだ終わらない為、泣く泣くダクトさんにこれを預け、先に帰還してくれと土下座。
「で、今コレが、私の元に、届いた、という……。あああああー…。うちの愚兄がご迷惑お掛けして、大変申し訳ありません…。」
何してるんじゃあのアホ愚兄!!頭をどれだけ下げたらお詫びできるかしら?!泣いていいよね?ねっ?
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