第8話 双子の兄は白ヤギで手紙を送る
それから、
高位貴族と王弟と愛の重い家族に囲われて疲弊気味…さらには、同じ庶民枠で仲間だと思っていたダクトさんまでも王族だった件。
〜私の育ての親は、規格外でした〜
……新しいラノベのタイトルかな?
とりあえず早く一人になりたい!!と、ドアを開けたら
「メェ〜〜〜♪」
羽根の生えた、体長30センチの白ヤギが、ホバリングでお出迎え……。
崩れ落ちて、リアルに orz な体勢の私にすり寄る白ヤギ…もとい、ミカ兄の使い魔ユキちゃん。
ええそうです幼女の頃、私がお手紙は白ヤギさんだと熱弁しましたが何か?
転生の自覚ないとか吹かしながら、やらかし散らしてるよね、私……。
「メェ?」
つぶらな瞳で、首に付いてるベル型のお手紙ボックスを主張するユキちゃん。
「はいはい、読みますよ…。ちょっと待っててね。」
手紙を取り出してから、ユキちゃんの頭を撫でて魔力を補充。黑ヤギさんに色が変わったから、これで帰りの分は大丈夫。
ああああ!!仕様について熱く語り合った日々が、黒歴史として私を襲う……。
「えぇと……あー、あー……。」
そしていつも通り、無駄にテンション高い手紙だね。風邪もひいてないしちゃんとご飯も食べてるし仕事も人間関係も多分、大丈夫だよ…オカンか!
はー、密林ダンジョンには南国フルーツ満載なのね…。父様が乗り出す案件かな。あっ、カカオっぽいのもあるかな?チョコリ(チョコレート)の価格破壊に1役買って欲しい!あーマンゴーじゃないこれ?干したやつ食べたーい!!
…ってヤバい、実家に絡め取られる未来しか見えない。発言に気を付けて返事を書かないと。
とりあえず、ナーババは、3分の1が限界でした、販売の際は、私の名前はくれぐれも出・す・な・よ、っと。後は、ダクトさんを使い走りにするなんて、今度やったら、私はフォルチュナ家の事は一切、忘れてしまう、かも、知れませんね、っと……。
「ユキちゃん、お待たせ〜!」
お返事を黑ヤギさんになったユキちゃんに持たせて、部屋の窓を開ける。
私の手に頭を擦りつけて、メェ!とひと鳴きしてから、窓から羽ばたいて行ったのだった。
これで、私が転生課で保護される事が確定したって知られた訳だから……
「ミカ兄が戻る頃にでも、一度実家に行かないと…駄目だろうなぁ。」
はぁ〜、とため息。
実家…フォルチュナ家は、なるべく帰りたくない。両親はまぁ仕方ないというか、まぁ、飲み込める範囲内だけど、兄達の過保護?過干渉?がちょっと……。
しかも運が悪いと、その弾けっぷりが利益に繋がる!と嗅ぎつけた両親がそれに乗っかって、斜め上の事態になる事が多々あって……。
先日私が帰った時は。
ギルドには豪奢なお迎えの馬車。
家の入口まで赤い絨毯を敷き、玄関前には“幸子おかえりなさい♡”の横断幕を持った兄と使用人達。
とどめとばかりに、屋敷裏本店ではサティ里帰りセールを開催。サチコお気に入り商品は半額です?
……悪夢!!
馬車降りてすぐ気配消しMAX!
ダッシュでギルド戻った。
それから没交渉でいたら、グランドマスター達が仲裁に来た。各所からの嘆願が凄かったらしい。周りから攻めるとは、卑怯な。
とりあえず、手紙は受け取る、私の名前で派手な事はしない、その約束が守れるなら、帰省を考慮しないでもない、という事で手打ちとした。
……普通、実家に帰るって休養になるはずだと思うんだけど?何の苦行ですか?
あぁ思い出したら寒気がする。
こんな日は、魔導冷凍庫の作り置きを適当に食べて、早く寝てしまうに限る…。
朝風呂でいいや、もう。
次兄、セガ兄の婚約者さんから頂いた、私仕様の可愛いぬいぐるみパート2、シマエナガ…もとい布人形?布鳥?のモフモフを撫でて、癒やされつつふて寝しよ。
あぁ〜………。どうせ、近々ミカ兄がギルドに来るんだろうなぁぁぁ…。
強く生きてやる……!
★☆★
私の、優秀な3人の兄達について、ふと、考える。
母方祖母に似て地味顔な私と違い、3人共、“初恋泥棒”の二つ名に恥じない美形だ。
長男ファスターク(ファス兄)は、豪快で兄貴肌。一見めちゃくちゃなようでも、何故か問題は片付き、事態は解決する。なんでだ。カリスマ?
なんやかんや(どうして毎年婚約破棄的な事が起きるの仕様なの呪いなの強制力なのそういう教育課程なの?)あった学園で、不思議と馬が合った子爵令嬢と電撃婚約。卒業後すぐお嫁に来て頂けて、現在、兄夫婦は父に付いて商家を守っている。
次男のセガール(セガ兄)は寡黙で研究者肌。癒やし系。植物を育てるのが好きで、学園を卒業後も薬学で非常勤講師をしていた。
今は隣国の、母方祖母の家で薬学関係の修行中。また、隣国は薬草大国なので、我が商家へ優先的に取引してもらえるよう頑張ってるらしい。さらにはそこで、私似?という令嬢と出会い、口説き落として婚約成立。私に、よく名産品?である
いわゆる、軽めな自白剤?の“心の中何でもおはなししちゃいま〜すZ”製作者。いつぞやは大変助かりました。
唯一、ちゃんと私の話を聞いてくれる兄。
三男は、私と双子の兄でミカエル。何でも器用にこなす天才肌。能力差がありすぎて、会うといつも自己嫌悪。すごく優しいけどね…。
そして双子と言っても、私達は二卵性双生児で似ていない。私は母方祖母に似た隣国系統の平たい顔族、かたやミカ兄は両親似で、くりくりお目々のかわいい系。私とは正反対だ。
長兄たちと同じ学園に通っていたが、飛び級で4年間分を1年でスキップ卒業。今は冒険者パーティ“幸福の担い手”でリーダーをしている、魔法剣士。
そもそも、ミカ兄が早期卒業して冒険者になったのは、私が通っていた魔法学院の郊外実習がきっかけだ。
私は魔法理論では特待生だったが、体術は目も当てられない為、両親から郊外実習に行くのを却下された。
いやいや、これ卒業試験なんだけど?防御身体強化守護とあらゆる魔法陣を私に買い与えておいて、やっぱり心配だから参加承諾書には署名しないぞするもんか!って、どういうつもりだ?
それを見かねた魔術学院からの紹介で、シルバー階級冒険者ダクトさんに護衛を頼む事になった。今思うと、コレって殿下の差し金だったんだろうな。
これで解決かと思いきや、何故かミカ兄まで付き添いをする事になり(男性の護衛と常にぴったり一緒だなんて許可できないってオイ!)、それでやっと参加の許しが出た。
まぁ、そこまでは良かったんだけど。
実習では、私、緊張で上手く魔法を行使できず。結界で足止めしてても、自分より大きいウルフの威圧で、魔法陣の発動が…。
そこに、いつもウザ絡みする令息が私の前に立ち塞がり、私の獲物を横取りしようとしてきた。
それを見てカッとなったミカ兄が無双。私の開発した魔法陣をバンバン行使、私の課題達成しやがった。
ミカ兄、大絶賛される。あの令息にまで兄貴と慕われるとか、意味不明…。
私が実習の為に何度も練習して、なんとか私1人でも、魔法陣の補助でやれるんだって研究結果出して今日実証して卒業するんだって頑張ったのに…
結局、兄の力で、卒業するのか。
心が折れた。
正直、その後どうやって帰ったか、全く覚えてない。
このままじゃ私、駄目になる。
矮小な私は、身の丈に合った慎ましやかな人生を送るため、ギルドに入ろう、独り立ちしようと思った。地道にやっていけば生きて行けるさ、と。
兄達とは、フォルチュナ家の威光からは距離を置いて、私は一人、地味に生きていきたい。
誰も悪くない。むしろ、とても優しい。
でも……。心が、疼く。
私って、なんにもできない、いらない子?
……はっ!ヤバイヤヴァイ、ダークサイドに墜ちてしまう!
そんな、拗らせの原因が、今目の前に。
「サティ〜〜〜!!!♡♡♡」
今日も可愛いね癒やし系だね最高だねッッ!!と叫びながら、私を抱きしめつつ頭に頬ずりしやがっています。
ギルドの真ん中で。
……遠くへ、行きたい。
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