第7話 転生課へ至る道程②
そうかー私の情報筒抜けかーと苦笑いしていたら、怪訝そうな殿下……グラントマスターが、教育モードでご説明なさいました。
「サティ嬢。改めて言っておくが、教会で行う成人の儀式の判定結果は、安全面の考慮の為に、上層部にも情報が入るのだ。その時に、サティ嬢がフォルチュナ家隆盛の隠れた功労者である事は、王家等には伝達があり、転生の可能性も示唆された。保護観察対象だな。」
うわー見られてたの、実家からだけじゃなかったのね……怖っ。
まぁね、確かに今思えば、学院では実家・兄関係の、悪意からのいざこざはほぼ無かった気がする。
あれ?じゃあ魔法学院で、高位貴族のお兄さまお姉さま方に妙に優しくしてもらえたのって…
恐る恐る、ミリー姉御…いや、受付統括長を仰ぎ見る。
「サティ!!私は純粋に、貴方を可愛く思っているのよ!お役目とかそんなのじゃないんだから!」
えっ?姉御が涙目?あーんど腕引っ張りからの抱き込み?!
「ぶふっ!?」
分かりましたのでその豊かな胸部装甲で私をぎゅうぎゅうしないで?!
「っうゔん!……もちろん、サティ嬢の周りにいたのは君を大切に思っている者たちだ(まあ、ある程度は厳選させてもらったが)。そういう事で、ダクトの件は理解して欲しい。」
私を抱きこむミリー先輩をバリッと剥がし奪い取って、再び膝に乗せる殿下。威嚇はヤメテ。
うーん、
「はぁ、そういう事ですか。とりあえず、理解しました。
えーと、では、あの、…ダクトさん、今後もお世話になります。」
「うん。よろしく頼む。」
結局、二人で頭を下げ合った。
温かい目で見つめてるヤンデレ夫妻の視線がこそばゆい……。
「でも、ダクトさん。何か不都合があったら言ってくださいね?微々たるものですが、お力になれる事があるやもしれませんし。」
本気でやれば、実家関係は
「いやいや、今まで通りでお願いしたい。この仕事のおかげで私の立場も護られているから、悲しいかな実は俺にも利はある。…まぁ色々あって、この国に亡命してきたようなものだから。」
ダクトさん、亡命……とな?
困った顔のダクトさんが目配せすると、殿下が口を開く。
「うん、まぁ巻き込まれないとは思うが、念の為話しておこうか。私とダクトとは、外交使節団の帰りに拾っ……出会った、仲だ。」
……は?
ドヤ顔で何を仰いますかね殿下!?
「当時第2王子であった私は、将来の臣籍降下に向けて、経験稼ぎの為に外交の席に着くことが多かった。そんな中、隣国で、外交官のドクトル公爵からの案内役という形で出会ったのが、ジーヴァルク……つまり、ダクトだった。」
ドクトル公爵って、東方の、閉鎖的な島国の…?医療関係に強い転生者が始祖だからドクターって覚えるのよ〜っておばあちゃんに教わったような……??
「ダクトは全ての権利を放棄し、冒険者として生きていきたいが、年老いてから生まれた末っ子が可愛い公爵一家は手放したがらない。しかも外部からの干渉のせいで彼の立ち位置は大変危ういものだった。」
過干渉の親……何処かで聞いたことがある話ですね?
「そこに、同盟国である我が国の外交使節団が私を連れて訪問した訳だ。
公爵としては、自慢の末っ子の仕事振りを見せつけて外交関連の役職へ布石を打つつもりだったのだろう。
しかしダクトは、お互いの挨拶が終わるや否や、私の前に跪いて、お抱え冒険者になる打診をしてきたのだ。
鉄壁公爵の、あの時の焦り顔!いやいや、いい物を見せて貰った!」
悪い顔でニヤリとする殿下。
「まぁ、あの公爵様が?」
ミリー先輩、殿下見つめてうっとり。
「そうなんだ、あの公爵が。おかげでその後の交渉も上手く行ったな。
……で、帰り際、いたずら心で“私の元へ来るならば、そちらの事情はきっちりカタをつけてから我が国を訪れよ”という手紙に、私の使い魔を封じた
そうしたら帰り道、国境を越えた先に冒険者がひとり立っていた。なので、その時からの付き合いという事だな。」
面白そうにダクトさんを見つめる殿下。
「……あの時は、チャンスをモノにする為に必死だった。殿下にしてみれば、奥方との婚約打診で挨拶行く時と同じ位大事な、人生における勝負所だったんだ。」
恥ずかしそうに、懐かしそうに言うダクトさん。
「むむ?私の挨拶の時は、お前みたいにガチガチ直立不動ではなかったと思うぞ?」
耳を赤くして反論する殿下。
「いやいや!そりゃ緊張はしていたが、俺はガチガチとまでは…。
お前の場合は、やれ服はこれでいいか、髪型は大丈夫か、果ては結婚まで最短にする為にはどんな利を公爵へ提示するべきか、指輪がどうだとか、ガチガチというかオロオロウロウロだったんじゃないかな?」
それは……!
立場のある者は……規範となる行いを、……!
俺は冒険者だからもうそんなもの……
……からかいの応酬が始まりましたね。仲がいいんですね、お二人。
ダクトさんの可愛らしい一面頂きました。
ちなみにミリー先輩は、赤い顔を両手で覆って、しかし指の間からしっかり殿下を見つめつつもだえていらっしゃいます。
しかし、殿下の発言で状況は一変。
「むっ?そもそも、ダクトだってジン・ドクトル卿の血筋ではないか。」
髪や目の色で継承権が決まる東方の慣習はまだまだ根強いし、世が世なら、王として立つような立場ということだろう?
……
……、…えっ?
王族、の、血筋???
ダクトさんが?
フリーズする私。
あちゃ〜言っちゃった!的な顔をしてしまう姉御とダクトさん。
あれっ?何かやっちゃいましたか?て顔な王弟殿下。(この人時々天然…)
だだだ大丈夫!
ワタシナニモシラナイアルヨ〜!?
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