第13話 鑑定結果の丸投げなう



 「……サチコ嬢。この部屋では、私も我が女神愛妻を膝抱っこするのが正しいマナーかな?」


 ちょっとお疲れ(触れてはならない)なミリー受付統括と共に鑑定部屋へと入った殿下は、開口一番、そうおっしゃられました。

 チベスナ顔で。


 と、言うのも。


 私の膝には獣化した王さん。

 その私をミカ兄が膝に乗せ。

 それをまとめてアンソニーさんが膝に乗せ。

 その状態のアンさんの肩にミィさんが乗る。

それを魔石式飛行撮影機(ドロー○機能搭載の最新式ですね!イイエワタシハ小さい頃ニお絵かきデ説明シタリシテマセン!)が部屋を乱舞!写真を撮りまくっていたから。

 やっぱり安心!フォルチュナ家クオリティ!百枚撮っても大〜丈〜夫〜!


 カオス!!


 ……しかしミリー先輩、これを見て何故嬉しそうにキャッキャできるの?

 あっ、もうこのドロー◯的なやつをご実家名義でご予約いただいてると?はぁ、毎度アリガトウゴザイマス……。



 ★★★★



 「妙な魔力反応があるからどうしたかと思えば、例のフォルチュナ家の魔道具か……。」


 ミリー先輩を膝に抱きながらソファに座り、眉間に皺を寄せてこちらを見る殿下。腰の手が何かヤラシイ……それをうっとり受け入れないでミリー先輩。

 ちなみに私達側は何とか普通に座り直しました、私の膝にしがみついて離れない王さん(私にはご褒美)以外は。ミカ兄との睨み合いは続いてるけど。


 「……で?次は古代語?さらに、(フェンリルの祝福の証と言われた)心眼鑑定?!我が女神で妻であるミリー統括から説明を受けたが、何というか……。

 まぁ、冒険者も全てを報告する義務がある訳ではないのだが……。」


 こちらが説明する前にサラッと言う殿下。

 何か王さんをチラチラ見てるけど、この柔らかさんは渡さないぞ?


 「やっぱり、鑑定部屋ここで話してたのを盗聴してやがりましたね、まぁ想定内ですけども。」


 笑顔で辛辣に返すミカ兄。おお、通常運転ですね。


 「む?サティ嬢の膝が占領されてる腹いせを私に向けるのは辞めたまえ、嫉妬は見苦しいぞ?」


 「「「いや、アンタには言われたくないわその言葉」」」

 ミカ兄たちの声がハモったわ…。


 「殿下、自己紹介乙!だね〜?」

 きっちりとどめを刺していくスタイルの王さん大好きです。


 「……ゴホン。

 それはまぁさておき、サティ嬢。

 心眼鑑定でたという事は、これらのドロップ品は新発見で、活用方法もある程度判明しているという解釈でいいかな?」


 ちょっと気まずい感じを払拭するように、私に話を振る殿下。


 「はい。ただ……。内容につきましては、知識がない者にとっては活用できるかどうか、というところでして。私がお教えする事は可能ですが、結果として窓口のフォルチュナ家に利益と負担が大きくなりすぎるのではないかと。」


 「報奨で爵位、とか本気で嫌がるからなぁうちは。」

 追い打ちをかけるミカ兄。


 「そーだよなぁ、フォルチュナ家の方々は代々、堅苦しいのはだいっきらいだ!なんて言ってたから、アタイ気に入ってたんだ。」

 ニヤニヤしながら言うミーさん。


 「そういえば前に昇爵の話が来た時ぃ、亡命先一覧を丸い的に貼り付けて、ダーツの旅!とか言って盛り上がってなかったかしら?サティにダーツ握らせて、的まで届かないから結局私が抱っこして刺してたわよねぇ!」

 あの時はどこの国にしたんだっけぇ?と、私にウインクするアンさん。供給ありがてえありがてえ…思わず合掌。


 「あの的、まだとっといてある気がする。今度はおれが手伝うからなサティ!」

 合掌してた手をぎゅっと握るミカ兄。いや、もう一人でダーツできます…。



 「……と言うことは、鑑定の出処はあくまで転生課、という案件にするしかない、と?」

 ちょっと顔が引きつってる殿下。


 そんな殿下にニコリと笑って、肯定。

 テーブルの上の鑑定調査結果の冊子を押し出す。


 それを、サムズアップして笑顔で見守る幸福の担い手パーティ。


 なんかもう色々、利権とか嗅ぎまわる奴の出没とか面倒くさいし、丸投げするスタイルで行きましょう!

 キラキラお目々で、殿下に多大なる信頼と期待を献上!!


 「………。」

 パラパラと受け取った冊子をめくりながら、眉間の皺が深くなっていく殿下。それをナデナデしながら伸ばしつつ、冊子を覗くミリー先輩。


 「あら、懐かしい!学院の頃、古代語ギャル語クラスグループで課題練習がてら、お手紙書いて回覧したわよね。

 “ゥチらマジズッ友BFF〜ww”って!」

 ウフフ!と私に笑顔を向ける先輩。

 そうですね、殿下へのツンデレ相談とか取り巻きと言われちゃうお友達と仲良くしよう大作戦とかまぁ色々アオハルな相談、クラス皆でしましたね。

 それで男女問わず仲良しが増えて、殿下のヤキモチ熱視線が恐ろしかったですよね……。


 「……“思い出を語るミリちゃむの可愛さが尊みヒデヨシでつらたん”」


 「!!“ゥチの好きピがジェラっててマジ神エモい”……♡」


 何か突然古代語を発してミリー先輩を顎くいする殿下、嬉しそうなミリー先輩。ホント二人は隙あらばイチャろうとする…。

 ぁ〜お顔が近づいて行くんですけどちょっと待てや二人の世界禁止!!

 うゔん!と咳払い。

 ハッとこちらを見るお二人。うん、そういうのは後でお願いしたいですネ。


 「……はぁ、うむ。承知した。

 “とりま、転生課案件な鑑定結果の処理はかしこまり!おけまる水産よいちょ丸”だ。」

 少し赤くなった顔をこちらに向けて、キリッと言い放つ殿下。ええぜひお願いします。


 「“結局全投げってマ?ゥチのパパ、サティ推しハンパないから、イロイロ相談したら秒で駆けつけジャスティスウェイ”だと思うし、私も力になれると思うわ!」

 ぐっと両手を握りしめてこちらにニッコリするミリー統括。おお、これで二代公爵家がバックについた!


 「では、この件は転生課で。今後の対策についてはダクトから知らせる。

 “鑑定結果は発表されたら皆テンションブチ上げポンポンポン!!”だろうから、連絡は密にな!

 それと、くれぐれもフォルチュナ家にはしっかりと、説明しておいてくれ。

 できれば……サティ嬢同伴で。」

 恐る恐るこちらを伺う殿下。

 一斉にこちらを見つめる皆さん。


 「…はい、お引き受けいただいたからには、私もフォルチュナ家には説明に参ります。

 ところで、古代語ソレはもういいのでは?できれば普通にお願いします。」


 「「「「“りょ。”」」」」

 敬礼して、ノリよく返す皆さん。

 

 ゔっ…学のある方々の高尚な会話なんだろうけど、お顔整った方々がギャル語って違和感スゴイよ!?



 まぁとりあえず、成果の押し付けは成功……かな?


 

★★★★★★★★★☆★



 そんな訳で、実家―フォルチュナ家へ皆と行くことになったのですが。


 「うゎ」

 「サァティィィー!!!やっと逢えたなぁぁぁー!!!待ちかねたぞぉぉー!!」


 ギルド宿舎からの巡回馬車、フォルチュナ家最寄りの停車場で降りるなり、奴が仁王立ちしていた。

 

 「オレ、参上!!待たせたなぁ!」


 赤マントを肩に払って、ダブルピースでニンマリと笑うイケマッチョ。

 忘れもしない、魔法学院時代に私にうざ絡みしてきたあいつ、港湾都市である辺境の伯爵家三男、リーダル・ワティーヴェ……。


 「相変わらずちっこいな人形のようだな元気か最近はどうだ俺は婚約が決まったんだお前に知らせたかったのにフォルチュナ家は何故か門前払いだしギルドはあのおっかない美人が鉄壁の守りで取り次ぐ気全くないしあぁお前の頭相変わらずちっちゃくてなで心地いいな一家に一台だな〜!!!!」


 私の頭をハゲる勢いで撫でながらノンブレストーク……貴方は何故5歳から私の扱いが変わらないのだ。ちっちゃくねーよおまえさんがデカイのよ。

 て言うか、久しぶりに私に会う人間は皆こういうテンションがデフォなの?


 「リーダ、ハゲ、る、から、やめろ、や」

 「おー?大丈夫!!ふさふさだぞぉー?

 ……ってうぐぎゃ!!!」


 激しい撫でが終わらず喋れない……と思ったら突然の解放、ふわっと抱かれ保護された。転移?

 「あぁ…だから一緒に行こうねって言ったのに!サティはもぅ!」

 ボサボサの頭を優しく撫でながら直してくれるのは、ミカ兄?


 えっと思ってまわりを見たら、リーダルは背後に立ったアンソニーさんにヘッドロックされて宙に浮いてる!?

 周りで「落・と・せ!オ・ト・せ!」ってはやし立てるミーさんと王さん……。


 「あ、あのさ。知ってると思うけど、色々距離感ゼロな残念イケメンなだけで悪気はないんだよこいつ。離してあげて……」


 鬼の形相な幸福の担い手パーティの面々に囲まれたリーダルを、一応フォローしておいた。

 

 その気遣いも虚しく、リーダルはクタッとなったのでした……、何故か笑顔で。

 怖っ。


 



 

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