欧州中世の風景と史実で綴られた優美な歴史絵巻

『中世最期の騎士』 と 『民から慕われる美しき公女』 の二人の結婚と、歴史的王国の誕生。
普通に王道ファンタジーの鉄板設定のようなパワーワードに聞こえるのに、これは歴とした史実。
欧州ハプスブルグ家の中興の祖とも呼ぶべきカップルの誕生の物語です。

本作、とても歴史色が強い作品で、関連する歴史的事象を丁寧に紹介しながら進めて行くスタイルであり、テンポよい物語を期待されている方には、正直あまりお勧めできないと思います。
ですが、この作者様が紐解いてくれる歴史的なイベントを踏まえながら読み進めて行くストーリーは、普通の小説とは異なり教科書で習った出来事に精彩を与えて一つの物語を作り上げていくよう。
全て史実で構成するわけでなく、フィクションを織り交ぜることでお話しをより面白くしてくれます。
現在ドイツに住まれているという作者様による現地の雰囲気と文献が、そのリアルさを押し上げてくれていると感じました。

実はまだ主役の二人は本格的にストーリーの中心に出てきていないのですが、それでも歴史的な小話とストーリーに華を添える少女達が惹き込んでくれます。
これから本格的に展開するであろう歴史絵巻、興味を持たれましたら覗いてみてはいかがでしょうか?
特に、歴史好きな方、歴史エッセイなどを読まれる方は必見かと!