これは絶望から始まる《希望》の物語

最後に小説を読んで胸が熱くなったのはいつだったか。

挫折を繰りかえし、傷だらけになり、葛藤し、時に大事なものを奪われながら、懸命に希望にむかって腕を伸ばすヒーローの姿に憧れたのはいつの頃だっただろう。

憧れの職業についたやさきに失敗をし、精神を病み、家族に愛されることもなく、三十余年の人生に幕を降ろした《俺》……異世界に転生したからには、同じ失敗を繰りかえしたくない!と胸に誓うも、悲劇は無情にも《俺》を襲う。
家族を奪われた悲嘆、故郷を焼かれた絶望。魔法までつかえなくなり、途方に暮れながら、それでもなお、《俺》は進み続ける。

そんな時に出逢った、ひとりの少女が彼にいう。

「お前の力を貸してくれ」
「今は使えなくても、お前はまた魔法が使えるようになる。そう、私は信じてる。それに、お前は十分すごいじゃないか」

これは絶望から希望が芽吹きだす、《俺》と《少女》の光あふれる人生の物語……――

読みはじめて、まずは設定の精緻さに息をのみました。異世界の原語が解かるようになる過程から魔法を修得していくまでが、とてもあざやかに、それでいて胸が弾むように描かれています。そしてそこに訪れる絶望。
緩急のつけかたも素晴らしく、読みはじめたらいっきに惹きこまれること間違いなしです!
転生もののお約束は踏襲しながらも古きよきライトノベルの香りを漂わせた、素晴らしい小説!

この冬、ぜひとも彼らと一緒に異世界の旅にでませんか――
ひと筋の希望を捜しに――

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