冒頭を読んだ瞬間、確信しました。
「これは魂を削って書かれた小説だ!」と。
度肝を抜かれる筆力。
真っ先に称えたいのはここです。
第一話の死、とんでもないですよね。
こんなにも精度が高い本人の死を描いた小説は、そうそう見当たりません。
死に対して真摯であるということは、つまり、生命に対して真摯であるということなのだと、私は思います。
そう、真摯! 誠実! 愚直!
この物語を表そうとしたら、そんな言葉が頭に浮かびます。
未来をはぎ取られていく衝撃を、言葉にならない身体の苦痛を、文字を貫いて描き切ろうとするまっすぐなその筆は、奔放に暴れ回るこの世界を、ずっとずっと力強く支え続けます。
初めて家族で見た風景、受けた風、歌。
泣きそうに美しい情景を目の前にありありと立ち上がらせたからこそ、それを決して奪わせまいと戦う姿が、無残にも毟り取られた耐えがたい苦痛が、決して消えない炎となって、気づけば読者の心にも燃え移っています。
だというのに、主人公が足掻けば足掻くほど見放されていくという、この残酷なシナリオ!!!
な、なんて恐ろしいことを思いつく作者様だ……とビビり散らかしました。
こんなん応援しないでいられる人、おります???
ロアくんの絶望が深いからこそ、地獄の底で見上げたアーシャちゃんという光が、これほどまでに眩しく輝く。
そうなんです。
こちら、度肝を抜かれるのは筆力だけじゃないんです。
地獄の底を駆け抜けるような容赦のないプロット。
可愛らしいのに気高く強い、魅力的な登場人物。
まっこと、名所ばかりです。
余すところなく書き尽くそうとする文章も、諦めかけながらも決して歩みを止めない登場人物たちも、絶望を与えて打ち砕き、それでも立ち上がる者には力を与える世界も、何もかもが呆れるほどに真っ直ぐで、胸を打つ。
レビューでネタバレしたくないので、これは内緒なんですけども…
諦めていた彼が、力を貸してくれと叫んだ時。
そしてずっとそっぽを向いていた世界が、その叫びに応えた時。
ぶわわっと涙が出てきました。
そうだよロアくん!!!これまでの泥を啜るような屈辱、足掻けば足掻くほど見放されていく虚しさ、全部抱えてそれでも歩いてきた君の旅路が間違いのはずなかったよ!!!
そうだろ!!!世界!!!!
生きていれば必ず、打ち砕かれる日がある。
どんなに気高い魂であっても、折れない人間などいない。
これは、膝をついたあとの立ち上がり方を教えてくれる物語。
毎日を必死で生きて、たまに潰れるときもある。
そんな愛すべき全ての普通の人々に届いてほしい、傑作です!!!
ある日、平和な生活が無慈悲に蹂躙されて。
大切な家族を理不尽に奪われて。
抗いようもない絶望の描写は読んでいるこちらの心までもがひしひしと蝕まれるようです。これほどまでに感情移入してしまうのは、ひとえに作者様の筆力が高いためでしょう。絶望の描写の他にも星空の下での一時や迷宮攻略のシーン等、心を呑むほどに美しい光の描写が圧巻です。世界がしっかりと描写されているからこそ、主人公たちの心の叫びが読者の心を切に揺さぶるのです。
圧倒的な絶望の中、それでも必死にもがき前進し続ける主人公たちの旅をずっと応援したくなる。そんな没入感に浸れる作品です。ぜひ一読してみてください。おすすめです。
最後に小説を読んで胸が熱くなったのはいつだったか。
挫折を繰りかえし、傷だらけになり、葛藤し、時に大事なものを奪われながら、懸命に希望にむかって腕を伸ばすヒーローの姿に憧れたのはいつの頃だっただろう。
憧れの職業についたやさきに失敗をし、精神を病み、家族に愛されることもなく、三十余年の人生に幕を降ろした《俺》……異世界に転生したからには、同じ失敗を繰りかえしたくない!と胸に誓うも、悲劇は無情にも《俺》を襲う。
家族を奪われた悲嘆、故郷を焼かれた絶望。魔法までつかえなくなり、途方に暮れながら、それでもなお、《俺》は進み続ける。
そんな時に出逢った、ひとりの少女が彼にいう。
「お前の力を貸してくれ」
「今は使えなくても、お前はまた魔法が使えるようになる。そう、私は信じてる。それに、お前は十分すごいじゃないか」
これは絶望から希望が芽吹きだす、《俺》と《少女》の光あふれる人生の物語……――
読みはじめて、まずは設定の精緻さに息をのみました。異世界の原語が解かるようになる過程から魔法を修得していくまでが、とてもあざやかに、それでいて胸が弾むように描かれています。そしてそこに訪れる絶望。
緩急のつけかたも素晴らしく、読みはじめたらいっきに惹きこまれること間違いなしです!
転生もののお約束は踏襲しながらも古きよきライトノベルの香りを漂わせた、素晴らしい小説!
この冬、ぜひとも彼らと一緒に異世界の旅にでませんか――
ひと筋の希望を捜しに――
第二章「奪還」⑥まで拝読しました!
転生ものではありますが、死までの経緯が丁寧で分かりやすく、そして突然死の描写は驚くほど綿密でリアリティがあり、転生後の周囲への理解も赤ん坊の視点ながら無理なく描かれていると感じました。
情景描写も心情描写も丁寧で、特別凝った表現を使っているわけじゃないけれど、とても真っ直ぐに心に響く文章だと思いました!
「静」のシーンはとても穏やかで優しい空気を感じたし、「動」の戦闘シーンは迫力満点でした(* ゚Д゚)
世界観も美しく、農村や砂漠などの描写にも惹き込まれました。砂漠のキャラバンで星空の下で焚火とか……もう、好き!(* ゚Д゚)
母から教わった歌・弔いの歌など、とても印象的な歌が出て来るのも素敵でした。
転生したロアが一から世界と人生を学んで成長していく姿は、読者としてとっても応援したくなりました。