花と食事……心と何よりも満たしてくれます

 本能に根ざした欲求は、創作における大きなテーマになりうる…というのは、今更、私のような者がいわずとも、多くの人が知っている事なのですが、それを再確認させられる物語です。

 物語の中心にあるドラゴンの少女・パイの存在は、「幸せだから笑うのではない。笑うから幸せなのだ」という言葉通り、天真爛漫な存在で、喜怒哀楽がとても良く表れます。

 食べる事に素直な欲求を抱いており、大人であれば変な言い訳を「だから仕方がないじゃないか」と結論付け、少ししらけた雰囲気にしてしまうことも度々なのでしょうが、彼女の素直な欲求は、まるで…この物語の根幹にある花のように瑞々しい刺激と、美しさをもたらせてくれたように思えました。

 料理も花も、人の心を満たしてくれると、本当は当たり前の事なのに、それを新鮮な気持ちで確認できる物語です。