世界は綺麗なだけじゃないけれど――南国の瑞々しい青春ファンタジー!

こちらはシーリズの第二部です。
第一部では現代日本ならば小学生くらいだったマルをはじめとしたスンバ村の子供達。この世界では貧富の差、階層の差、そして宗主国と植民地、人種差別……と現実世界と変わらない悲しい現状がありますが、それでも第一部は舞台が田舎の村のこともあり、良くも悪くも世界は閉じており、子供達は抑圧されると同時に守られてもいました。
第二部では、主人公のマルはその才能を見出されてエリートの通う全寮制の男子校へ入学「させられ」ます。そこは耽美とは程遠く何とも過酷な男の世界。田舎で貧しくものんびりと育ってきたあの子(マル)は大丈夫かしら……

と、ヒサリ先生と同じように読んでいるこちらも心配しどおしです。

寄宿学校の生活は、この年頃ならではの悩み・葛藤、そして同級生や先輩や先生との関係の中で生じるたくさんの摩擦が描かれます。そのどれもが身に覚えのあるもので、「ああ〜そんなこともあった〜」と今は脳内ですっかり美化された青春の思い出に、目を覚ませ!とばかりに良いパンチをもらいました。そうだよ、そんなに綺麗なものばっかりじゃなかったよ。
でも、そんなふうに世の中って何だか嫌な問題ばっかりだなあと気付き始めた年頃だからこそ、きらっと光る瑞々しさが余計に際立つんですよね。まさに青春。

その一方で、主人公マルの故郷で暮らすかつての同級生達が、進学をしない分、早く大人の仲間入りをしていく姿も描かれます。
そして徐々に、しかし確実に不穏になっていく社会情勢、歴史の波のうねりが近付いていることもわかりました。

さわやかな青春ファンタジーでありながらも、綺麗事だけでなく、社会や人の醜い部分まで骨太に描き出すことができる文章力はすごいです!
しかし、辛いシーンでも決して不快な気持ちにならないのは、やはり作者様がこの作品世界やキャラクターに注ぐ「愛」があるからだと思います。

かつて本好きな少年少女だった全ての人におすすめしたいシリーズです。

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