帝国寄宿学校の少年 《アジェンナ国物語 ~青春編~》

rainy

はじめに 物語の舞台について

 物語の舞台は、南国のとある島国「アジェンナ王国」。

 ひょうたん型の南北にやや細長い本島を中心に、多くの島より成る王国である。

 古くから海上交易の要所として栄えたが、西の強大な帝国ピッポニアの長きに渡る

過酷な植民地支配によって、人々の多くは貧しい生活を強いられてきた。


 物語が始まる十四年前、ピッポニア帝国とアジェンナの北東に位置するカサン帝国との間に戦争があり、カサン帝国が勝利したのを機に、アジェンナはピッポニアからカサンに割譲され、カサン帝国支配下に入った。


 「アジェンナ王国」はもともと北部のアジュ族を中心とする「アジュ王国」と南部のアマン族を中心とする「アマン王国」に分かれ、長年闘いを繰り広げてきたが、150年前にアジュ国王が強大な軍事力を持つピッポニア帝国を後ろ盾にしてアマン王国を制圧、アジェンナという統一王国を作る。アジェンナはその事をきっかけにピッポニアの政治介入を許し、アジェンナ王は長らく事実上ピッポニア帝国の傀儡と化していた。

 アジェンナは北部アジュ王国が南部アマン王国を制圧して作られたとういう経緯から、北部に比べて南部は発展が遅れ貧しく、また北部アジュ人は一般的に南部アマン人を見下している。また北部アジュ族と南部アマン族の言語は、似てはいるが異なっている。


 アジェンナには厳格な身分制度がある。国王を頂点として、貴族、士族階級があり、その下に農民を中心とした平民階級があるが、同じ平民の中でも地主や役人と小作人の間の貧富の格差は著しい。さらにその他に「人外の民」と呼ばれる「奴隷」や「妖人」がいる。「妖人」とは妖怪に関わる仕事をしている、とされる人々で、「穢れた存在」とされ徹底的に差別されている。

 アジェンナ王国の首都は北部のタガタイ。

 アジェンナ全体が熱帯気候に属して常夏である。しかし南部や湿潤なのに比べ北部はやや乾燥していて、季節によっては夜間気温が低下し寒くなる。

 

 物語の首都はアジェンナ国首都のタガタイの寄宿学校である。

 遅れた南部の片田舎「スンバ村」に生まれた「妖人」の少年マルは、情熱あふれるカサン人教師オモ・ヒサリによってその天才的な言葉の才能を見出され、エリート養成学校「タガタイ第一高等学校」強制的に入学させられる事になる。しかしそこでの生活は彼にとって「悪夢」に他ならなかった……。


 この作品単独でも楽しめるように書いていきたいと思いますが、この小説の前日譚、マルとヒサリ先生の出会いと成長については、

『妖怪の村の小さな学校』https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054921914497

に描かれています。興味を持ってくださった方、ぜひこちらもご覧になってみてください!


用語集


アジェンナ国  

本編の舞台の国。現在はカサン帝国の植民地支配を受けている。多民族国家で北部中心に一番多いのがアジュ族、次が南部中心のアマン族。他に商業に長けたシャク人や移民労働者として流入したベルベロン人、山岳少数民族などがいる。


カサン帝国  アジェンナ国の現宗主国


ピッポニア帝国  アジェンナ国の旧宗主国。カサン帝国と敵対。


タガタイ アジェンナ北部に位置するアジェンナ国の首都。物語の舞台。


妖人 「妖怪と関わる仕事をしている」として過酷な差別を受けている人々。具体的には妖獣の皮で靴などを作る職人、邪悪な妖怪が集うと言われる死体や出産や汚物に関わる葬儀屋や産婆、妖怪退治するハンターや、妖怪を扱いショーを見せる芸人、妖怪の言葉が分かると言われる物乞い芸人などがいる。


スンバ村

アジェンナ国南部の大河チャヤテー川支流にある小さな村。主人公マルの出身地。この村の「森の際地区」に、マルや他の「妖人」達が住んでいる。

この小説の前日譚『妖怪の村の小さな学校』の舞台。


タガタイ第一高等学校

アジェンナ国首都の全寮制男子高等学校。カサン帝国に忠実なエリート官僚等を養成する目的の学校で、卒業すれば将来が約束されていると言われるが、その学園生活は極めて過酷で教師や先輩は暴力も辞さない。

もともとはアジェンナ在住のカサン人だけが入学を許されていたが、マルが入学した年より現地の少年達にも入学の道が開かれた。とはいえ入学出来るのはほとんど首都付近の貴族階級の者に限られており、マルと、同じ村のエルメライの二人だけが南部の田舎から入学した。

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