彼女、九月、帰り道

「時間は平等じゃない」高校生の僕に姫岡の真意はわからなかった。姫岡は屈託のない笑顔を掲げて、誰にでも平等に接する。僕のようなクラスのミジンコにもだ。なあ、すごいだろ？
そんな姫岡に恋をした。誰もが惚れた。だけど、別れは突然だった。事故死だった。
あれから十年。人気Web作家の埋もれた初期作に僕らの高校時代が舞台となっている小説が発見されたことで、当事者が騒ぐ。小説での姫岡は何者かに殺されたと言う有りもしない結末が描かれていたからだ。事故死したと思われていた姫岡が、もし自ら死を選んでいたとしたら？　それとも他殺なのか？
同級生であった天音に呼び出された僕は、調査の手伝いを打診された。実名で登場する五人の同級生による、姫岡の真実。明かされる姫岡の死の真相。小説家の正体は一体誰で、その目的とは？