第375話:成長の証 後編
セレネイアは力強く
≪
貫き通すことばかりを考えていたセレネイアの剣軌がここで変わる。
押す力が
糸を通すべき道には、はっきりとした印が浮かび上がっている。ここまでの戦いでアメリディオやケイランガたちがつけた
気づいた
(まずい。なぜだ。この非力な小娘ごときが、我の
セレネイアは一切力を
「必ず決めます。
残り一ハフブルをもって、
短時間の
「我の
「私だけの力ではありません。ここまで貴男と戦ってきた皆が私を助けてくれたのです。それに私には師匠も、この手に握る素晴らしい相棒もいますから」
「それがお前たち人の強さということか。我はここで滅びるか」
下半身が完全に失せ、残るは頭部と
もはや、
「小娘よ、見事であった」
それが
≪セレネイア、本当の意味での
セレネイアは無音で左下段に置いた
溶けて液体と化した
「
ようやく残心を
「よくやった」
「よくやりました」
親のように見守っていたヨセミナとカランダイオも同様、これでようやく安心できるとばかりに大きく息をついていた。
セレネイアの周囲に動ける皆が集まってくる。一番早かったソリュダリアがセレネイアに抱きついてくる。
「し、師匠」
短くなった髪を
「セレネイア、やったな。お前ならできると信じていた。お前のこの顔に傷がつかなくて本当によかった。お前は王国の宝だからな」
また同じことを、と思いながらも、セレネイアはソリュダリアの気持ちが嬉しくてたまらない。剣の師匠としても、同じ女としても尊敬できるソリュダリアは、セレネイアが甘えられる数少ない一人でもある。
だからこそ、苦しいほどに力強く抱きしめられても、満足感の方が大きいのだ。
ソリュダリアに続いて、ケイランガとアメリディオ、さらにはコズヌヴィオとワイゼンベルグもセレネイアの勝利を
ラディック王国第一王女として、また第一騎兵団団長としてのセレネイアに対してケイランガとアメリディオを片
「セレネイア姫、素晴らしい一撃でした。やはり、貴女は名実ともに第一騎兵団団長を名乗るに
予想外の言葉だったのだろう。セレネイアが絶句している。
「私もアメリディオの言葉に異論ございません。倒れているあの者たちもです。もはや、セレネイア様のお立場に異を唱える者は誰もいないでしょう」
ようやくソリュダリアの腕から解放されたセレネイアが
「そう言ってもらえると嬉しいです。この勝利は私一人で成し
セレネイアが膝を落としたままの二人に向かって深々と頭を下げる。
タキプロシス、バンデアロ、システンシア、さらにはケイランガの命を帯びて離脱したランブールグ、彼らもまたセレネイアが感謝を贈るべき者たちだ。
意識を取り戻したら、改めて話す機会もあるだろう。セレネイアはその気持ちを胸に収め、頭を上げて掛け替えのない仲間たちを見回した。そこには時期女王としての風格さえ漂っていた。
いつの間にか、カランダイオがヨセミナの横に並び立っている。
「お前のところの姫様が愛される
そうは言いつつも、満足そうな表情を浮かべているヨセミナを、カランダイオは面白そうに眺めている。
「あれがあの娘の持つ魅力の一つでしょう。確かに、剣士としてはあまりに頼りなさすぎますが、第一王女としては十分ではありませんか」
ヨセミナはセレネイアとその周囲に、まるで衛星のように集う者たちを見つめながら、言葉を返す。
「着実に一歩一歩成長しているな。セレネイアの将来は、いや、真の
「実父イオニア国王退位後、第一王女から王女へと即位するのか。あるいは、あの
これだけは聞いておきたかった。誰よりもセレネイアの
「そんなこと、私にも分かりませんよ。ですが、
その言葉は突発的に吹き荒れた暴風によって
「そうだな。あの娘なら、あり
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「どうやら、セレネイア様が
問いかけられたところで、ムリディアには応えようがない。
第五騎兵団団長のチェリエッタは特殊能力の持ち主だ。純然たる魔術師でないにもかかわらず、実に魔力操作に長け、魔力を全方向に
しかも規模感が違う。有効範囲はおよそ十キルクにも及ぶ。指向性を持たせて一定方向だけに集中させることも可能だ。彼女のこの能力を
三姉妹の
対して、チェリエッタは発動時のみ自身の魔力を利用する。
「
チェリエッタに悲壮感はない。むしろ高揚しているぐらいだ。魔術が使えないなら、剣を使えばよい。チェリエッタにも負けられない強い意志がある。
「団長、まもなく
ムリディアを護るために剣を振るう。誰にも邪魔はさせない。この場は
セレネイアたちが
「任せたわ。ムリディア、貴女は必ず私が護ってみせる。だから、安心して秘宝具を作動させなさい」
みるみるうちに最後の月、
全ての魔術の
混沌の騎士と藍碧の賢者 水無月 氷泉 @undinesylph
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