桜の匂い 第１章 希薄な赤い糸（小学6年生～中学3年生）女子編

　小学６年生の初日、桜の花が匂う風の中でコンプレックスだった爪の形を知らない男子に指摘されて、私はムカついてしまう。
　クラスが違った中学１年では、あいつに近付くのを避けていたが、中学2年では不本意にも同じクラスになってしまった。
　中学２年生の私に届いた気持ちの悪い名無しの告白メールの送り主はあいつで拒みたかったけれど、後先恨まれても面倒だからとメル友にしてしまった。
　家族旅行で行ったイタリアのコモ湖で観光バスから降りて来たあいつを見て驚愕したけれど、気付かないフリをして私はあいつを避けてしまう。
　あいつとの思いもしなかった出来事は、あいつが偶然を必然にしていた。
　避けていたはずのあいつは、中学３年のコーラス祭で私を指差して見詰めながら想いをソロパートのフレーズに込めて歌い上げ、私を…続きを読む