07 エピローグ 漢委奴國王印(かんのわのなのこくおういん)
河北にて苦境にあった劉秀であったが、やがて勢力を拡大し、ついには王郎を圧倒するに至った。
そして冬が終わり、春が来る頃には、王郎の
追い詰められた王郎は、劉秀に降伏を申し込んだ。
「万戸候にしてくれ」
王郎は劉秀の臣下となることを望んだ。
しかし劉秀の返答は、にべもなかった。
「命が助けるだけ、ありがたいと思え」
それを最後通告に総攻撃を開始、
劉林は死し、王郎は命からがら逃げだしたものの、劉秀軍の王覇に斬られて命を落とした。
……こうして、劉秀は徒手空拳に等しい立場から、数十万を越える一大勢力へと成長した。
事態を危惧した更始帝が、帰還と軍の解散を命じたものの、劉秀はこれを拒否。
そして臣下からのたびたびの懇望を受け、皇帝に即位。
世にいう後漢の光武帝である。
そして同年、更始帝は光武帝と対決することなく赤眉軍により殺される。
光武帝は
*
建武中元二年正月。
雪の洛陽。
「…………」
ふと気づくと、雪が降り積もっていた。
それを眺めていた倭の
「そろそろ、宴の支度が整っていよう」
大夫が振り返ると、
「いえ」
大夫は滅相もないと首を振る。
「一刻も早く奴国にと思い、つい」
顔に出たことをお
奴国はまだ落ち着かず、倭の他国との関係で揺れているらしい。
「ふむ」
劉秀は
「お呼びですか」
馮異が亡くなり、今や群臣筆頭となった鄧禹が、にこやかな笑顔で近づいてきた。
「あれを」
「今ですか」
「先に渡しておこう。そして宴くらいは、ゆるりと楽しませてやりたい」
鄧禹は拝礼して、一旦下がった。
大夫が首を傾げていると、すぐに鄧禹は戻ってきた。
その鄧禹の手に持つものを劉秀は受け取り、大夫に「こちらへ」と呼ぶ。
「これを」
押し
それは金でできている印章だった。
そして印影には、「
「これは……」
「それで卿は少しは安心できるかな? であれば宴を楽しんでいただきたい」
鄧禹は相変わらずの笑顔で「こちらへ」と大夫を
嬉しいやら何やらで戸惑う大夫に、劉秀は「行こう」と微笑み、そして一同は揃って宴へと向かって行った。
……雪はまだ
【沈黙に積雪 了】
沈黙に積雪 ~河北の劉秀~ 四谷軒 @gyro
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