【 距離10cmの感触 】


 僕はなぜだか、凛ちゃんの体に覆い被さっている。

 そして、顔の距離はわずか10cm。


 彼女は、土手の草の上に体を仰向けにし、僕の顔を見上げる。

 僕は、その彼女の体の上で向かい合って、ふたりは倒れていた。


「だ、大丈夫だった……? 凛ちゃん……」


「あっ、う、うん……。大丈夫……。助けに来てくれたんだね、ナンデくん……」


「あっ、ぼ、僕は南出みなみでね……」


 彼女は、クスクスと僕に笑いかけた。

 そしてこう言う。


「ナンデくん、手が私の胸に……」


「あっ! ご、ごめん……」


 僕は、すぐに体を起こし、距離10cmから、1mへと離れる。

 手に残る凛ちゃんの極上ビーズクッションのような柔らかな胸の感触……。

 触っていたこのイタズラな右手の平を見つめて、心の中で叱りつつ、褒めてもやった。


「ケガとか大丈夫……? 頭とか打ってない……?」

「大丈夫……。草がクッションになってたみたいだから……」


 僕は凛ちゃんの胸がクッションになっていたよ。

 ありがとうと心の中でつぶやいた。


 彼女は体を起こすと、パンパンと草や土埃つちぼこりを払った。

 女の子座りになっている短いスカートの下から覗く、白いむっちりとした太ももが実に眩しい。


「本当に大丈夫?」


「うん、下がやわらかい草


 はっ!?


 今、彼女何て言った……?


?)



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る