【 距離10000km 】


 凛ちゃんのお父さんは、東京から遥か遠く離れたアメリカのニューヨークへ転勤となった。

 それに合わせて、凛ちゃん家族も全員、アメリカへと移り住むことになったんだ。


 凛ちゃんは、泣いていた。

 教室でも、学校の行き帰りでも……。

 ここのところ、ずっと泣いている。


 彼女がアメリカへ旅立つ前日の土曜日、あの思い出の土手で彼女と待ち合わせた。

 彼女は、僕の顔を見ると、また涙した。


 僕は、彼女と一緒に土手の草の上に隣同士座り、さよならを惜しんだ。


「うぅぅ……、うぅぅ……」


 凛ちゃんは僕に会ってから、ずっと下を向き、膝を抱えて泣いている。

 彼女の短い髪から覗くかわいらしい小さな耳も、すごく赤くなっている。


「凛ちゃん、また会えるがよ。僕も大きくなったら、ニューヨークまで会いに行くき」

「うん……、絶対、絶対だよ……」


「ああ、絶対、絶対会いに行くき」


 僕はそう言って、彼女の肩を抱きかかえた。

 彼女は震えていた。


 その姿がとても、とても、小さく感じた。



 でも――



 僕のその約束は、果たされることはなかった……。



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