【 肩キッスの距離 】


 そして、僕たちは、同郷ということが分かると、急速に仲が良くなっていった。

 お互いかれ合い、距離も徐々に近くなる。

 最近では、肩を触れ合う程にまでなっている。


 いわゆる『♪』状態だ。


 でも、学校では、絶対にそんな素振りは見せない。

 ふたりで仲良くしていることもしないし、もちろん、土佐弁も一切使わない。


 あくまでも、普通のクラスメイトだ。

 しかし、唯一、学校の行き帰りだけが、僕たちのデートの場。


 この場だけは、思いっきり地が出せる。

 土佐弁もしゃべり放題だ。


 凛ちゃんがなぜこんなにも、地球人離れしたかわいい顔をしているか分かったような気がする。

 誰とは言わないが、高知には、宇宙人並みにかわいらしい芸能人が確かにいる。

 凛ちゃんは、あの狭い地域の中で生まれた奇跡の『宇宙人』の一人なんだ。


 凛ちゃんが最初に、僕を助けてくれたのも、自分と同じふるさとの人間だったからだと思う。


 そして、一番初めにくれた、あの『ウインク』。


 あれがなかったら、僕はこの地に馴染めていたかどうか分からない。


 あの時、感じたドキドキ。

 僕らは、お互い、皆と違う世界で結ばれる運命にあったのかもしれない。



「ねぇ、ナンデくんは、どんな食べ物が好きっちゃ?」

「そりゃ当然……、せーの!」


「(すき焼き、好きやき好きです!)」


 さすが僕らは、息もピッタリだ。

 そして、ふたりの時間の流れ方も。


 彼女の顔を今ならまっすぐと近くで見ることができる。



 ――でも、運命のイタズラは突然訪れた。

 この後、僕らが呆気あっけなく離れ離れになるなんて、この時は思いもしなかったんだ……。



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