【 距離30cmの告白 】
彼女は、はっきりと口にした。
「やき」と……。
僕は恐る恐る、隣でちょこんと座る凛ちゃんにこう聞いてみた。
「今、凛ちゃん、『やき』って言った……? いい間違えたのかな……。そうだよね……」
「ううん、『やき』って言ったよ」
「えっ……、ええぇーーーーっ!!」
僕は、彼女を二度見した。
僕の思考回路は、ショート寸前だ。
一体、ここで今、何が起きているというのだ。
「私も、ナンデくんと一緒の高知生まれなの」
「はっ? こ、高知生まれ……?」
「
ああ~、この響き、久しぶり~。
何だこの安心感は……。
「ナンデくんの住んでた南国市も私、
(わわわわ~、ちゅ~うよ。久々に聞いたぁーーーーっ!)
僕の凛ちゃんに対する親近感は、今日の最高記録10cmよりも近づいたと思う。
「そうなんや、凛ちゃんは、出身はどこ?」
「高知市」
「高知なんや、僕より都会やね」
「鏡川の近く。知っちゅ~う?」
「知っちゅう、知っちゅう」
東京の人が聞いたら、今日の晩ご飯は、『シチュー』でもするのかと思うだろう。
僕たちは時間を忘れ、その土手に座り暗くなるまで、お互い土佐弁丸出しで、地元の話で盛り上がった。
彼女は、3年前に高知から東京へ、お父さんの転勤の都合で引っ越してきたらしい。
彼女とのこの30cmの距離が、僕にはとても心地良く感じたんだ。
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