【 距離計測不能 】


 その後、月日は流れ、僕は大学から地元高知へ戻り、そこで就職した。

 忘れようと努力していたこともあるが、年月がいつしか彼女のことを少しずつ忘れさせてくれた。

 彼女のことは、もう、いい思い出の一つになっていたんだと思う。


 あれから10年経ち、僕が28歳になった頃、高校時代の友達の結婚式に呼ばれ、久しぶりに東京へ行くことになった。


 結婚式の前日、僕は、あの思い出の土手へ行ってみたくなった。



 久しぶりに来るこの土手。

 見慣れた景色。良かった、ここはまだ何も変わっていない。


 でも、10年ぶりに改めてここへ来て見たら、無性に彼女に会いたくなった。


 夕焼けが眩しく川面に光り輝く。

 その眩しさに、思わず目を細める。


 彼女との距離が一番近づいたあの時も、丁度こんなオレンジ色の太陽が眩しい日だった。


 川下から突然、風が吹く。

 思わず、何か懐かしい匂いを感じて、後ろを振り返った。



 ――でも、誰もいない……。



 このイタズラな風に、僕は彼女のことを期待してしまったんだ……。



 今、はっきりと思い出した。


 あの日、最後に彼女が僕に言った言葉。



「いつまでも、愛しちゅうよ……」



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