【 距離1m 】


 僕は、売店で売れ残ったあんパンを1つゲットする。

 しかし、甘いものは苦手だ。


 いや、今はそんなこと気にしていられない。

 とにかに腹ごしらえをしなければ。


 そのあんパンを片手に、教室へと戻る。

 すると、教室の後ろから彼女たちが教室の前の方で楽しそうにお弁当を食べているのが見えた。


 僕は廊下側の一番後ろの自分の席に座る。

 あんパンの袋を力任せに破り、一口くわえる。


 すると、また彼女と目が合った。

 彼女は親指を立て、一度くしゃりとした笑顔を僕に見せ、無言の口パクをする。


「よ」


「か」


「っ」


「た」


「ね」


 そんなことを口にしたような気がする。


 僕はまた恥ずかしくなり、あんパンを口いっぱいに頬張りながら、クルクル頭を掻き毟るかきむしる


 さっき、彼女は僕の肩に手をやった。

 あの時に口元から見えた、かわいらしい八重歯やえば


 彼女はどこの星から来たのか、僕のふるさとの星にはいない宇宙人だ。


 あの1mの距離に、今頃、心臓がドキドキしてしまう。



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