【 距離2m 】


 あれから僕は徐々にこの学校にも慣れていった。


 そして、少しだけ楽しみもできた。

 それは、教室の一番遠いところだけど、いつもそこに彼女がいるから。


 彼女の名前を初めて知ったのは、3日目だった。

 彼女の持ち物に書かれている名前を見てしまったんだ。


坂本 凛さかもと りん


 わがふるさと、土佐の誇れる『坂本 龍馬さかもと りょうまさま』と同じ高尚なお名前だ。

 りんちゃんとは、彼女の地球人離れしたかわいらしい顔には、お似合いの名前だと思う。


宇宙凛うちゅうりん(笑)』


 そう、スマホに打ち込んだ。



 彼女は、今日も後ろの女友達の方を向き、おしゃべりに夢中のようだ。


 でも、なぜだか時より、彼女と目が合う。

 そして、なぜだか『ウインク』をする。


 誰かに見られやしないか、ドキドキだ。

 それをごまかすかのように、僕は明後日あさっての方を見ながら、クルクル頭を今日もく。



 ――今日も無事一日が終わった。

 学校の自転車置き場に、自分の自転車を取りに行く。

 鞄を前かごに入れ、自転車を押していく。


 すると、また聞き覚えのある、あの声が聞こえた。


「ナンデく~ん」


 僕は後ろを振り返る。


 何故かそこには、また、にっこりと眩しい笑顔光線を僕に放つ、凛ちゃんがいた……。



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