力を巡る光と陰。非力な少女がやがて「魔術師」になるまで。

国の資源たるクリスタルを守るため、絶大な力をもたらされた人間がいる。
人呼んで水晶魔術師。その一人に選ばれたリビラはその名に相応しいだけの力を持っており、その力もまた治安維持のために行使していた。
一方、才能に恵まれなかったその妹シリカは、日夜人のために動くリビラに劣等感を抱いていて……。

一見するとシリカ側からのリビラへの嫉妬や劣等感のみで埋め尽くされそうなところ、リビラの妹を思う気持ちもまた同じように細かく描かれており、視点者それぞれが客観的に見れる作風をしています。
一方で両親が水晶魔術師であるに関わらず自身は才能にも選ばれず、やむを得ず医者の道を選んだレイク。彼の心もまた綿密に描かれており、そこには水晶魔術師への憧れだけでなく、口にも出せないようなどす黒い気持ちと、それに端を発する彼の活躍がまた物語をかき乱します。彼の存在が役割でしかない「悪」を否定しており、かなり示唆に富んだ内容に見受けられます。

オリジナティ溢れる世界観の上で「人間」を等身大のまま描かれています。総じてどのキャラも強烈かつ魅力的。
水晶魔術師なる英雄の肩書きに悩み苦しむ人間模様は特に必見で、作者様の本気が伺えます。
スルメのように味わえる一作です。

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