第9話 夢は実現するのか

日勤の仕事を終えて病院の敷地を出ると、シルバーの外車が停まっている。

塚本先生の車だ。

先生の車の窓がウィーンと下がる。


「あなたに話があるの。たまには家に来ない❔」


 心臓がグッと締め付けられる。

 私は自分の願望に逆らえなかった。夢で見たことほどのことではなくても、なんらかの形で先生に触れてほしい。


先生は車を降りて、後部座席のドアを開ける。


「どうぞ」


 私は期待しながら車の中へ入った。


 

 

 

 

 「私の事を恨んでいるんじゃないかしら」


 先生は運転しながら私に問いかけた。

 声は穏やかで優しい雰囲気だった。


私は問いに答えなかった。

あの事を言わなければ。

あのキスの事を。


 「私は、先生の夢を見たんです」

 「山崎さんが苦しめられる夢❔」

 「違うんです。先生が私にキスをする夢です。それも、すごく激しいキスだったんです。」


 先生からの反応はなかった。

 淡々と運転していた。

 先生は私のことをどう思っているのだろう。気持ち悪い❔誰でもよかった人❔


 先生の自宅に着いた。

 車は地下駐車場に入れて、私のところへ戻ってきた。

 先生の家は、41階建ての最上階にあるタワーマンションだった。

 ホテル並みの設備で私のマンションとは格が違う。


 エレベーターに二人で入って、どんどん上がっていく。 

 

「先生は私の事は気持ち悪いと思っていますよね。代わりにはいくらでもいるんですよね」


 先生は何も答えない。

 

 41階にたどり着いた。

 先生は私を部屋へ案内した。

 ドアが閉まると、先生は私の手に触れて、リビングのソファへ連れて行った。


 「先生、何か言ってくださいよ。」

 「うるさい!」


 ほら、こうだよね。最後はこうなんだ。

 先生は静かなお人形さんだけが好きなんだよ。

 私はソファから立ち上がって逃げようとすると、先生の手は私の裾を掴んで移動できないようにする。

 そして…。

 立ったまま私の唇に触れるだけのキスをする。


 私は腰が抜けてしまった。ソファに崩れ落ちる。

 動悸がした。先生がキスをした瞬間、心臓が締め付けられるような違和感を感じた。


 「先生もっと…。私が夢で見たようにしてください」


 先生は静かに私の頬を両手で包み…。

 私の唇に舌が割り込む。先生は横に縦に斜めに顔を振り、私に激しいディープキスをした。舌が柔らかい。気持ちいい。


 もっともっと先生に触れて欲しい。

 しかし、先生はディープキス以上はしてこなかった。

 


 

 


 


 

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