先生!何故私のものを奪っていくの?

milly@酒

第1話 先生とは親友?それとも共依存?

私こと山崎美穂は塚本由紀先生と仲が良かった。私は看護師で、塚本先生は女医だ。

塚本先生と私とは、歪んだ関係にだとは気づかなかった。

朝は私が夜勤でなければ、先生は私の自宅から職場まで車で送ってくれた。帰り道もだ。私の自宅から職場までは、徒歩十五分くらいだろうか。

そして先生は私の勤務表をスマホに移し、私のスケジュールは把握していた。私には先生のスケジュールはわからない。

休日は二人で買い物に行ったり、食事をした。温泉旅行に行く事もあった。

先生は私と同じ物を揃えたがった。外のものは恥ずかしいので、なるべく屋内のものにしてもらった。マグカップ、こたつの毛布、枕など。


穏やかな日々が続いたが、そんなある日の事…。

私は職場で男性医師に告白された。私と付き合いたいと。性格よし、稼ぎよしで、そこそこ美男子だった。先生の名前は野島先生という。

以降、急に塚本先生からの連絡が途絶えた。

野島先生の連絡も取れなくなった。

どういう事だろう。


私は見てしまった。ショッピングモールで塚本先生と野島先生が腕を組んで歩いているのを。とても楽しそうだった。

私は腸が煮えくりかえりそうな怒りと、この世の終わりのような絶望を感じた。

今日はクリスマスイブだ。二人はそのまま食事をしてどこかに泊まるのだろうか。マイナスな感情が私の頭を巡る。


25日のクリスマスは自宅に閉じこもった。食材は昨日買ってきたので、外に出なくても大丈夫だ。塚本先生の連絡は今日も来ない。

一言くらいあっても良かったのではないだろうか。お付き合いする人が出来たから、今までと同じようには会えないとか。


年明けの飲み会でのこと。

「山崎さん最近元気ないね。」

気遣ってくれる男性看護師がいた。小川係長だ。

「係長、実は私は振られてしまって。」

「えっ!?そうだったんだ。変なこと聞いて申し訳なかったね。」


それからというものの、小川係長と私との距離はすこしづつ近づいていった。

バレンタインデーの夜、私がチョコをあげると小川さんは何かを言いそうだった。

嫌な予感がした。


「僕と…」

「待ってください!嫌な予感がするんです」

「えっ!?どんな予感?」


ここで告白されたら、小川さんはまた先生に取られるのか?私はそう思った。取られるだけでなく、先生とはずっと連絡も取れないだろうか。


次の瞬間、小川さんは私の口を手で覆った。

「んんっ」

小川さんは私のバッグに手をかけてキーホルダーを取り、足で踏みつけた。


「これは…」

「盗聴器ですね。誰がつけたのか…。心あたりありますか?」


私は首を横に振った。

思い出せない。わからない。


「大丈夫ですか?」

「なんだか腰が抜けちゃって。」

「こんな事もありましたし、家まで送りますよ。」

「ありがとうございます係長。じゃあお言葉に甘えて。」


小川係長は紳士だ。

その優しさにホッとする。思わず、私の目から頬を伝って涙がこぼれた。


それからしばらく歩き、私のマンションのエントランスにたどり着いた。

私は言葉を発する事なく、小川係長に抱きついた。心細かったからかもしれない


「お休みなさい。」

小川さんはそう言うと、私の頭をポンポンなでなでとして帰っていった。

また連絡が取れなくなるのだろうか、そう思いながらエントランスに入った。


「今日は山崎さまにお客様がおいでです」


ロビーの奥のソファに座っているのは、塚本先生だった。
































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