第13話 何処まで行ったの?

後日、私と先生は廊下でバッタリと出会った。辻副院長の部屋の近くで。

先生は私の顔を見ると、顔をしかめた。


「辻副院長には可愛がってもらっている?」


どこまで話せばいいのか…。何も話さなくてもよいのか。私は何も答える事が出来なかった。


「図星でしょう、何処まで行ったの!教えてよ!」


先生は珍しく感情をあらわにした。

私の両肩を掴んで前後に揺すった。

あなたが辻副院長をすすめてきたのでは?


「私が最後まですれば良かったわ。こんなにも純粋な心の持ち主なのに。」


先生は私の頭をそっと撫でた。


「梶原副院長に目をつけられているんじゃ…。」


「そのことは考えなくて良いのよ。もう直ぐ終わる事だから。」


先生は私の手を取った。


「あなたの手の甲は艶々ね。このまま食べちゃいたいくらい。」


先生は手の甲に口づけすると、そのまま舌を這わせた。


「先生、公然で何を…。」


先生は答えない。



「先生、話があります。先生の都合の良い日に、どこかでお茶でもしていただけませんか?お互いの誤解を解きたいんです。」


「今日行くわよ、今日ね」


大切な事なのか、先生は繰り返した。


私は笑顔で返した。先生は私の顔をじっと見ていた。



仕事帰り、私は先生のマンションの近くの喫茶店でホットコーヒーを飲んでいる。


カランコロンとドアの鈴の音が鳴る

先生が後からやってきた


「山崎さん」


先生は私の手を取る。


「私の家に行こうと思っているけれども、いい?」


先生は会計で私の分を払い、急ぐようにして喫茶店を出た。

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