その後の話
その後の話1 ボックススプリング
昨年末、客室のベッドのマットレスがへこんでいることがわかり、大変な思いをしながら70ものマットレスを交換したことがあった。(詳しくは『第8話 5時間おくれ』参照)
これはその1週間ほど後の話である。
いつものように清掃後の客室をチェックしていた私は、ある客室のベッドが見るからにへこんでいることに気が付いた。
「まさか私、へこみを見落としていた!?」
私はあわてて部屋番号を確かめ、マットレスの交換リストをチェックして驚いた。
なんとそのマットレスは1週間前に交換したばかりの新品だったのだ。
「1週間でマットレスがへこむなんて。なんてひどい品質なの。 」
あまりのことに私は半ば怒りながら、通りがかったメインテナンスのダニーを呼び止めた。
「ダニー、ちょっとこのへこみを見てくれる?これ、この間替えたばかりのマットレスなのに。1週間でこんなになるなんて信じられない!」
ダニーも明らかにへこんだベッドを見て、「これ、新しいマットレス?ひっでえな。」と言いながら近づいてきた。そして、ちょっとベッドを見て考えてから「ほとり、ちょっとそっち持ってくれる?」とマットレスを取り除けた。
マットレスの下にはボックススプリングとよばれるベッドの台がある。
そしてそのボックススプリングは見事に真ん中がへこんでいたのだ。
へこみを見つけてダニーは「ほら。こっちがへこんでたんだよ」とちょっと得意そうに笑った。上に乗っていたマットレスの厚さは約30センチメートル。ボックススプリングがどれだけへこんでいたかがわかるだろう。
私は一瞬、思考が停止した。
……ということは、この間交換したこの部屋のマットレスはへこんでなかったかもしれないってこと?
マットレスは決して安いものではない。保証期間内、無料で交換してもらった70ものマットレスのうちいくつかはマットレスではなくてボックススプリングがへこんでいた可能性が大いにある。マットレスのへこみを確認して書類を作ったのは、すべて私だ。
私はどこにあるか分からないマットレス会社にむかって心の中で手を合わせた。
その後、私は時間を見つけてはボックススプリングのへこみを確認した。100あるベッドのうち、へこみのみつかったボックススプリングは約半分。
このボックススプリングをいつ、どのようにして交換することになるのか。
それはまだ全く未定である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます