最終話 今日も仕事は続いていく
ここ最近、私はあるハウスキーパーにかなりのストレスを感じていた。
彼女が働き始めて3か月。彼女は人当たりもよく、出勤態度は良好。ただ、目につくゴミを拾うだけで掃除機をかけないなど、掃除のやり方があきれるほどいい加減なのだ。そして何度指導しても変わらない。それがどんどん私のストレスになっていた。
人手不足の中、1人のハウスキーパーはとても貴重である。私は他の人とも相談しながらいろいろ指導も変えてみた。彼女はいつも返事は良いのだが、それが行動につながらないのだ。
しかしとうとう他のハウスキーパーからも彼女に対する苦情が出始めた。このままだと仕事場の雰囲気も悪くなる、ということで彼女を解雇することになった。
私はこんな形で解雇するのは初めてである。解雇される方もたまらないだろうが、解雇する方も決して楽ではない。この数日、私は胃が痛くなるほどしんどい思いをしていた。
その二日後の夕方、年末のの全従業員感謝パーティーがあった。
ここ数日そのことで気持ちが沈んでいた私は仕事が終わるとそのままパーティに参加した。
そこに来たランドリーのメキシカンのおばちゃんのマイラとリアを見て、びっくりした。さっきまでひっつめ髪に作業着で仕事をしていた二人が、きっちり髪を結いあげ、ばっちり化粧もして、ブーツを履きこなし、颯爽と現れたのだ。
他にも、イルミネーションのついたセーターを着ていたり、蝶ネクタイをしていたり、それぞれ恰好から楽しんでいる。
(みんな、すごい! そうだよね。やっぱり人生楽しまなくっちゃ!)
そう思ったとき、ふっと心が軽くなった。
その日は皆でおいしいものを食べ、おしゃべりやゲームをして、楽しい時間を過ごした。私もバカなことを言って皆と笑いながら、ここ数日の重苦しかった心の
裏側にいろいろなドラマを秘めながら、ホテルは今日も営業を続けている。
ホテルでの仕事は、ストレスも多く、これだけ働いて、これだけの給料か……、と思わないこともない。それでもきっと私はホテルでこれからも毎日、思いもしなかった出来事に出会いながら、あたふたしたり、笑ったりしていくのであろう。
(終)
読んでくださり、どうもありがとうございました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます