第2話 要注意な客とチップ

 私がハウスキーパーを始めて興味深く思ったのは、客の部屋の使い方で、その人の性格や普段の生活までが見えるような気がするところである。きちんと、使ったものまで整頓されている部屋、食べかすやゴミがいたるところに散らかり足の踏み場もないような部屋など、チェックアウト後の部屋の散らかり具合はさまざまである。


 今まで一番掃除に時間がかかったのは、1部屋に2人がかりで2時間。これは掃除の目安時間が1人1部屋30分、というのと比べてもどれだけ大変だったかわかるだろう。それは結婚式の新郎新婦のところに友人たちが突撃してお祝いし、天井にまでいろんなものがくっついたすさまじく荒れた部屋だった。


 とても散らかった部屋を掃除するのは大変だが、すっかりきれいになった部屋を見るとものすごい達成感があり、自分が魔法使いにでもなったかのような気になる。


 これまでの経験から次のような客は要注意である。


・結婚式の宿泊客

 喜びに羽目を外して飲みまくるせいで大抵すごいことになっている。


・大学生のスポーツチーム 

 女子チームの部屋と男子チームの部屋では女子チームの部屋のほうが大抵汚い。


・子供のスポーツチーム

 一番注意が必要なのはホッケーチーム。注意しておかないと、子供たちはホッケースティックを振り回して走りガラスを割ったりするからである。また親たちも夜、子供たちをほったらかして食堂で酒盛りを始めたりするので要注意だ。


 さて、チップ収入も期待してホテルの仕事を始めた私だったが、始めてすぐ考えが甘かったことに気が付く。実際には、ホテルでチップを置くお客さんはかなり少ないのだ。大体、10部屋に1部屋あるかないかくらいである。

 そして経験から言って、チップがおいてある部屋は、なぜか大抵がごみの散らかった汚い部屋ではなく、きれいに使われた部屋だ。もちろん、要注意な客からのチップはほぼ期待できない。




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