アメリカの田舎のホテルで異文化体験

かわのほとり

本編:アメリカの田舎のホテルで異文化体験

第1話 未知の地、サウスダコタへ

 アメリカ合衆国、サウスダコタ州。


 日本人はもちろん、アメリカ人の中でも、この州がどこにあり、どんなところか思い描ける人はほとんどいない。

 サウスダコタは、アメリカ中西部にあり人の3倍も牛がいるど田舎である。人口の8割以上は白人で、アジア人はたったの0.9%。日本人にはほぼ出会わない。


 私は今、そんな日本人には馴染みのない州のとある町のとあるホテルでハウスキーパー部門のマネージャー、ヘッドハウスキーパーとして働いている。仕事仲間はほぼ、ここで育ったアメリカ人か中南米出身の外国人で、いわゆる低所得者である。


 私がホテルで働き始めて3年半。

 日本で生まれ育った私は、このホテルで想像の斜め上をいく出来事にたびたび出くわしてきた。このエッセイでは、そんな体験を書いていこうと思うが、今回はまず、私がハウスキーパーになるまでのことを話したいと思う。


 私がアメリカに来たのは2000年。当時、カリフォルニアで学生をしていた日本人の旦那と結婚したからである。カリフォルニアに住むこと6年。その後、旦那がサウスダコタで仕事に就いたので家族で引っ越すことになった。


 引っ越し先に着いてみて驚いた。大学があるくらいなので多少は大きい町かと思っていたのだが、車で15分程走れば通り過ぎてしまう。町を一歩出ればそこには広大な畑と牧草地が広がっている。

 過疎化した田舎かと思えばそうでもなく、小学校は3つもあり、スーパーに行けば子供を4、5人連れた家族がごろごろいて、週末にサッカー場にいけば広いフィールドは子供だらけ。アメリカの田舎には子供があふれているのである。


 そんなサウスダコタの片田舎で、私が仕事を探し始めたのは3年半前、末っ子が小学校に上がるタイミングだった。子育てにはお金がかかる、というのが理由だが、私がアメリカで働くのは今回が初めてだ。

 日本人の多いカリフォルニアやニューヨークなどの都市には日本人対象の仕事もあるが、この田舎の町で私にできる仕事は限られている。

 

 目に留まったのは、子供たちが学校に行っている間に働けるホテルのハウスキーパーだった。時給の低さは気になるけれど、仕事時間は朝9時から夕方まで。なによりも時間帯が良かった。

 低賃金でもチップがもらえるのなら手取りは多少増えるだろう、と考えて応募し、すぐに働くことが決まった。


 ホテルの仕事は資格も学歴も全くいらない。時給は安く、給料はファストフード店員と変わらない。アメリカに住む日本人はまず、しようと思わない仕事だろう。


 それでも掃除の手順を覚えてしまえば後はだいたい一人作業のハウスキーパーは、英会話に不自由な私には気楽な仕事だった。

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