第5話 3つの関門
ハウスキーパーの入れ替わりはとても激しい。雇われてすぐやめてしまう人も多く、どちらかというと初日から来ない人、数日働いて来なくなる人ばかりである。
ホテル業界は常に人手不足に悩まされており、コロナが始まって人手不足はさらに深刻になっている。コロナ前は二十数人いたハウスキーパーが、今は約半分、10人ちょっとの人しかいない。それはうちのホテルだけの話ではなく、隣のホテルではハウスキーパーが足りなくて清掃がおいつかず、一時期、客室を半分に制限していたこともあったくらいだ。
現在、人を雇う側に立ってみて、ホテルで人を雇うのはとても難しいと実感している。給料も安く、思うよりも楽な仕事ではないからであろうか。
そこにはまるで3つの大きな関門があるかのようだ。
関門1:面接に来るかどうか。面接に現れない人はけっこういる。
(ちょっとあなた、履歴書をだしたからには、仕事を探しているんでしょ?)
関門2:仕事の初日に来るかどうか。これもまた、初日から姿を見せない人も珍しくはない。
(働く気がないのなら、連絡してほしい)
関門3:トレーニングを終えた後も働きつづけるかどうか。仕事に定着する人は非常に少ない。
私の体験からしてこの3つの関門を乗り越えて働くハウスキーパーに出会うのは難しく、実際に1か月以上続く人は雇われた人のうちの1割いるかいないかである。
もちろんホテルにも長く働いている人も何人もいる。経験もあり、責任を持って働いているその人たちはホテルを支える柱のような人たちである。
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