その後の話3 運転免許証
新しい人を雇うことになった。
いつも初日には、身分証明書をコピーしたり必要書類に書き込んでもらうために、15分程早く来てもらうことにしている。
今回雇う人はちょっと年配の気のいいおばさんだ。
私はいつものように、身分証明書である運転免許証と社会保障番号カードを持ってきたかを問うと、彼女は「運転免許証がないから、代わりに州発行のIDカードでいいかしら?」と聞いてきた。身分証明書としては運転免許証でも州発行のIDカードでもどちらでも良いし、なんならパスポートも有効である。
「もちろん大丈夫よ」と返事し、IDカードと社会保障番号カードを預かりコピーをした。
私はその2枚のカードを返しながら「ん?」と思った。
彼女はその日1日、しっかりトレーニングを受けて働いていた。指導したアズ―が彼女は覚えも早いしてきぱきと動きも良いと感心していたくらいだった。
そして午後3時過ぎ、彼女は初日の仕事を無事に終え、明るく「また明日ね~」と手を振りながら帰っていった。
その時私は窓に駆け寄り、彼女が車に乗り込み帰る姿をじっと目で追った。
そう、彼女は車に乗り込み、エンジンをかけ、しっかり運転して帰っていったのだ。
「運転免許証がない」って確か言ったよね?
私は何かいけないものを見てしまったような気がして、そっと窓から目をそらしたのだった。
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