民俗学や歴史、神話や俗説など、様々なエッセンスがふんだんに盛り込まれた物語。
この物語のキーワードであり、主人公たちが謎を追う不吉な予言がある。
「女の蜘蛛が、川や海を赤く染める」、と言うものだ。
主人公たちが所属する黄昏堂は、数々の人外の者たちが働いている。つまり、主人公もまた人外だ。黄昏堂には、怪奇事件を解決する専門家たちがいる。憑き物であったり、妖怪であったりと、その面々は様々だ。主人公は彼らと共に、予言の謎を解いていく。
九州が主な舞台であり、日本史だけでなく地域史や地形もヒントになるのも、特徴的の一つだ。
果たして、女の蜘蛛とは何をさしているのだろう?
そしてその蜘蛛が、何故川や海を赤く染めるのか?
敵対する人外とのバトル要素もありますが、何より推理が面白い。
知識として知っていたものでも、解釈が違えば違う一面を見せる。
キャラクターたちも魅力的で、やり取りが面白かったです。
是非、御一読下さい。
妖怪。それは暴論を承知で言えば、人間が人間達にとって都合の悪いこと、恐怖を覚えるもの、よくわからないもの、を押し付けた(引き受けさせた)存在なのだと、私は思っています。
本作品では、そんな妖怪やあやかしといったものが登場、活躍します。
そして不可思議な事件を解決していくお話、です、前半は。
けれど、そこから展開されていく後半は。
前半部分が枕詞だったのかと思ってしまうほどに、怒涛の展開を見せます。
作者様が真に書かれたいことは?
まだお話は完結を迎えていませんが、私はこれを追いかけずにはいられません。
人間の本質を問うているように思える本作品を、できるだけ多くの方に読んでいただきたいです。
この物語は、ただの妖怪退治の話ではありません。妖怪という存在を通し、古くからの日本文化や社会の「闇」を深く鋭く抉り出し剣を突き立てるような、現代ドラマにも似た鋭さを孕む作品です。
妖怪と聞けば、人間に害をもたらす厄介な化け物、というようなイメージが浮かびます。
けれど、日本の文化の中に「妖怪」という存在が発生したそもそもの理由に、深く思いを馳せたことはあるでしょうか。
この物語に足を踏み入れた瞬間、おどろおどろしく忌わしい妖怪たちが蠢く闇に取り込まれると同時に、なぜ彼らがこの国に蔓延るようになったのか、その理由が私たちに押し寄せてきます。
それは、人間が文明を発展させるに従い破壊され始めた自然環境や大気バランスにも似ているかもしれません。
私たちの心の「負」の部分、「闇」の部分が形を得て暴れ出す。数知れない人々の晴れることのなかった恨み、憎しみ、悲しみ。それらが一つに纏まり、計り知れない力を持つようになったら——。このような恐るべき力を持った妖怪たちが、いつ出現してもおかしくない。
この物語を読み進めるに従い、ただの妖怪退治とは全く違う、日本の歴史や社会とまさに密接に繋がった恐怖を呼び起こされます。
妖怪は、ただの憎むべき架空の化け物ではない。人間の負の感情が生み出した、私たちの心から分化した一部、と言えるのかもしれない。そんなことを、作者様は確かな文献等を元に理論的に積み重ね、独特の説得力を持って読み手に迫ってきます。
非常に個性的な魅力を放つ現代ファンタジー長編。おすすめです。
北部九州に拠点を置く退治屋組織【黄昏堂】福岡支部。
そこに所属する八蝶と仲間達が、事件に挑む。
というのが本作の概要ですが、凄いのは妖怪や怪異に対する考察と情報量です。
その妖怪がそもそもどうして出来上がったのか。元となった存在、辿った歴史、どうしてそんなことになったかという解釈まで、実に事細かに書かれている。単なる妖怪退治には止まらない、民族学に対して興味を持つきっかけにもなりそうです。
さらに妖怪のことだけでなく、それを通じて、自分たちも無関係ではいられない問題にまで深く切り込んできます。
いったいどれだけ調べ、考えられたのか、作者様の知識と情熱が伺えます。
だけどそれだけ情報量が多いと、堅苦しくなりそうと思う方もいるかもしれません。
しかし心配御無用。本作は、バトルアクション・ギャグホラー。この中にあるギャグの部分が所々で発揮され、重い展開になりそうな時、フッと笑えて心を軽くしてくれます。登場人物もそれに合わせてか、重い過去や背景を抱えていたとしても、笑わせる時はしっかり笑わせる。
特に主人公の八蝶は、知識が豊富な解説考察役でありながら、バトルシーンではしっかりと頑張り、ギャグでも筆頭に立つという、本作の特徴を全て担うことができる、大活躍なキャラとなっています。
舞台は九州の北部。今日もどこかで起こる妖怪絡みの怪異を調査、解決するのは、退治屋の組織【黄昏堂】。
主人公の八蝶をはじめ、たくさんの力を持った人間や仲間の妖怪が、怪異に立ち向かっていく妖ファンタジーです。
巻き起こる怪異にゾクゾクさせられたと思ったら、不意に吹き出してしまうようなギャグもあり、少年漫画であるようなバトル要素とコメディが、良い塩梅に絡み合っています。
そして、作者様は大変博識でいらっしゃる。
実際に語られている伝承や妖怪、文化や宗教が、非常に上手く物語に組み込まれています。
読んでいると、こんな言われや伝承があったのかと関心し、長い歴史の中で起きた出来事に対する考え方が描かれていて、勉強になりました。
妖怪ってかわいい。
ギャグバトルホラーって面白い💛
ほらほら。どんどん読めちゃうでしょ。
だって、おもしろいんだもん。
でね。
ふと気づいたら。
おや。ここはどこだ?
肥前ロンズは、読み手をどこに連れてゆこうとしている??
ただのアクションホラーじゃない。
ただのコメディ長編じゃない。
もっと深くて暗くて、人の皮膚の裏側をガリガリするような怖さが
にじんできます。
第一話と第二話。ぜひ続けてお読みください。
肥前ロンズの力量が あなたを異界へ連れてゆきます。
振り返っちゃダメですよ。
どっちみちもう。
もどれないの、読む前には。
牛鬼、学校の七不思議、付喪神、蟲毒…
かつて『地獄先生ぬ~べ~』、『結界師』、アニメ『学校の怪談』などを親しんできたアラサーにはちょっと懐かしくうれしい世界観。なんで子供も大人も“怪異”に惹かれるんでしょうね。
妖怪はメジャーなものからマイナーなものまで、民俗学的解説も秀逸なので、物語全体に厚みがあります←わたしはオタクなのでこういうところがけっこう好き。
そんな中、Vtuberなど現代的なものが登場したり(しかもその状況が眼に浮かぶほどリアル!)、退治方法が現代的な物にアップグレードされていたりと、なるほど、これは令和のホラーなんです。面白いんです。
私が子どもの頃にもあった、学校にまつわる七不思議。
それは、世代を超え、地域を越え、日本中どこにでもあるネタですよね。
ロンズさんのこの作品を読んでいると、なんとなくその謎を解く鍵が隠れているように思います。
子どもの頃は、ただ得体の知れないものへの恐怖だったはずの七不思議。
説得力のある圧倒的な筆力で突き付けられると、背筋が凍りそう。いや、私、もう大人なんですよ。こういうの、怖がるお年頃じゃないでしょう……って自分に言い聞かせつつ。恐々と続きを待っています。
まだまだ序盤ですが、これからどう転がっていくのか……最後まで追っかけたい一作です!