霊感があったら日常がホラーになる……なんて思った?
- ★★★ Excellent!!!
アマチュアのホラー作家、紫桃(しとう)は、霊感の強い友人、神路祇(こおろぎ)から話を聞くことでホラー小説を書こうとする。しかし、神路祇は怖い話をすることに積極的でなく、紫桃は苦労として彼女から霊や妖怪に関する経験談を引き出そうとするのだが……。
神路祇の従妹であり、紫桃と同類というべき、怪談好きの杜(もり)が現れたことで二人の関係にも変化が訪れる。
霊感がありながらも、それが日常になっているため、幽霊にも妖怪にも恐怖せず、ただ暮らしの豆知識のように感じている神路祇の描写が面白い。彼女から話を聞きだそうとする紫桃と杜が滑稽であり、どこか微笑ましいのもポイント。両者が似た者同士でありながらライバル関係になる様子も面白いが、互いに少しだけ許容し合う関係に変わっていくのも見所だ。
そして、ついに――というか、いまさら紫桃が自分の思いに気づく……のか?
霊感を持つ神路祇と周囲の人々の姿を描いたホラーコメディの第二弾。迷コンビが再び登場し、とりとめない会話の中で、残酷ながらも美しい霊の世界の不条理と摂理が語られる。霊とともに生きるものの苦労が独特のタッチで描かれ、その思いに共感させる霊能ストーリーの佳作。