アマチュアのホラー作家、紫桃(しとう)は、霊感の強い友人、神路祇(こおろぎ)から話を聞くことでホラー小説を書こうとする。しかし、神路祇は怖い話をすることに積極的でなく、紫桃は苦労として彼女から霊や妖怪に関する経験談を引き出そうとするのだが……。
神路祇の従妹であり、紫桃と同類というべき、怪談好きの杜(もり)が現れたことで二人の関係にも変化が訪れる。
霊感がありながらも、それが日常になっているため、幽霊にも妖怪にも恐怖せず、ただ暮らしの豆知識のように感じている神路祇の描写が面白い。彼女から話を聞きだそうとする紫桃と杜が滑稽であり、どこか微笑ましいのもポイント。両者が似た者同士でありながらライバル関係になる様子も面白いが、互いに少しだけ許容し合う関係に変わっていくのも見所だ。
そして、ついに――というか、いまさら紫桃が自分の思いに気づく……のか?
霊感を持つ神路祇と周囲の人々の姿を描いたホラーコメディの第二弾。迷コンビが再び登場し、とりとめない会話の中で、残酷ながらも美しい霊の世界の不条理と摂理が語られる。霊とともに生きるものの苦労が独特のタッチで描かれ、その思いに共感させる霊能ストーリーの佳作。
霊感は無いけれど奇談に興味のある紫桃君が、日常過ぎて自覚していないけれど霊感のあるコオロギさんに、妖にまつわる体験談を聞きに行く有給休暇日の物語。
コオロギさんの経験は、本人があまり意識していなかったり、逆に敏感に察して気を付けていたりするので、怖くて危険すぎるレベルはちゃんと回避されています。
でも、日常の中にするりと入ってくる五感で感じる経験談は、とてもリアルでちょっと背筋がゾクリとします。
どんなに科学が発達し多くのことが解明されても、妖の存在を否定することは出来ないのです。
そんな二人の会話は、時に人生について素敵なヒントをくれたりもします。
紫桃君とコオロギさんの関係? 気になりますよね。
二人の会話は穏やかで、ほのぼの。
読んでいる私たちはニヤニヤジレジレ。
まだ友人以上にはなっていないにも関わらず、その距離感が信頼に満ちていて心地よいのです。いつまでも二人の会話を聞いていたくなるくらい。
こちらの作品、同じ作者様の『ホラーが書けない』と言う作品の続編になっているのですが、そちらを読んでいなくても楽しめます。でも、紫桃君とコオロギさんの出会いが書かれていますので、合わせて読むとより一層楽しめます。
ほっこり系ホラーとも呼べる本作品、是非皆様も体験してみてください。
お勧めです!
主人公(紫桃【しとう】)と、その友人(神路祇【こうろぎ】:コオロギ)の対話により綴られるストーリー。コオロギさんは女性で、本人は認めないけど霊感のある人。そして、「ちょっと」変わった価値観の持ち主で、それがまた魅力的。
各話は主人公が書き留めているノートの中から、コオロギさんから聞いた怪談っぽい話が語られている。背筋の凍る、あからさまに怖がらせる様な怪談ではないけれど、コオロギさんが実体験した日常の中に潜む妖(あやかし)が妙にリアルで、時々ゾクっとする。
途中からは彼女の従姉妹の杜【もり】さんも出てきて、コオロギさんを中心とした三角関係の様な会話も楽しい。世界観に惹き込まれ、最初から最後まで一気に読んでしまった。
※フィクション……だと思うけれど、コオロギさんの体験談が妙にリアルで、これはノンフィクション、若しくはモデルとなった作者様の知人がおられるのでは? なんて思ってしまいます。
ホラー小説を書くことが趣味の主人公、紫桃。そして彼の書くホラー小説のネタを多数持つ、霊感が強い美女コオロギ(神路祇)の短編連作ホラー第二弾!
今回はさらにコオロギの従妹も登場し、物語にさらなる膨らみが出ています。二人のとーっても微妙な関係と相まって、人間関係もつい微笑ましく見守ってしまうのも楽しみの一つ。
メインの怪異については、ホラーなのに語り手であるコオロギが全く怖がっていないので怖くない――と思いきや、時々ゾクっとするリアルな話もあり、そのギャップがまた癖になります。個人的なオススメを上げるなら、「16 霊感のある友人が恐れる「神隠し」」。
神隠しという非日常が日常と融合する感覚がとてもリアルで、ぞくぞくしました。
前作からの続きではありますが、このお話だけでも読めますしどの話もさらっと読めるので、是非とも気になったところから手を出してみるのも良いかもしれません。
主人公は、ホラー作家の男性。しかし主人公は霊感がゼロであるために、ホラーがなかなか書けないでいた。そこで主人公は霊感を持つエキゾチック美女に、心霊体験を語ってもらい、それをメモして使っていた。今回はそんなホラー作家の㊙ノートに記される体験談だ。
美女の心霊体験談は、バリエーションにとんでいた。駅で腕を引かれるというようなことは日常茶飯事だったが、ある職場の焦げたような臭いには危険を感じて職場を辞めたことまで。そんな美女が、従妹を連れて主人公に会いに来た。美女の従妹も霊感がないが、仲良しの美女の心霊体験には興味があった。
しかし飲み屋の帰りに、美女とその従妹と同じホテルに泊まることになった主人公は、日常に潜むさらなる心霊体験を聞くことになり……。
怖がりな癖に従妹はぐいぐいと心霊体験を聞いてくれるので、主人公としては有り難いが、美女本人は心霊体験を日常と捉えているので、語り口はそれほど怖くない。シリーズものだが、本作だけでも十分に楽しめる一作。
是非、御一読下さい。
ホラー小説家志望なのにホラーの苦手な紫桃と、アヤカシを五感で感じることのできるコオロギとの対話物語。
普段からとっても仲良しで、読みながらホッコリとしてしまう二人。
真面目で実直な紫桃と、美人で天然で可愛らしいコオロギ。
そんな天然なコオロギの話す奇談、怪談は背筋の凍るような怖い話から、ちょっと不思議な話まで。よりリアルで物語に深みが増しています。
ページを開けば、あっという間に二人の対話物語の世界に引き込まれてしまうほどの筆力の高さ。まるで自分も一緒の席で話を聞いているのかと錯覚するほど虜になります。そこに存在する魅力的な主人公たち。
不思議な魅力の溢れる本作をぜひご一読下さい。
他人にとっては非日常で、小説にしたくなるようなネタでも、ある人にとってはしょっちゅう起こる日常の一コマだったりする。
怪異を怪異と思っていないのか、いつも「ほーーん」としている「コオロギ」に、ホラー小説のネタが欲しくてたまらない「紫桃」は振り回されっぱなしなのです!
日常の中にうっかり紛れ込んでいる、不思議な怪談?の数々。
そんな小ネタがたくさん出てくるのも嬉しいけれど、コオロギと紫桃の微妙な関係?にやきもきするのも楽しみのひとつ。
可愛らしいコオロギと二人の関係にほっこりしてしまう、「読み始めたら止まらないホラー小説」、いかがですか?