素人作家の “きょうそう” ホラーが書けない2

神無月そぞろ

素人作家の稿(したがき)

素人作家の “狂想” 曲

01 秘密のノート、公開を決意する


 なあ、見られたくないものってないか?


 俺には秘密にしておきたいものが部屋にある。

 それは家族にも知られたくないものだ。



『エロ本かよ?』



 違う!!

 あ、いや、エロ本も見られたくないかも……。

 じゃなくって! それよりもやばいものだ!


 俺にはエロ本よりも隠したいものがある。それは――「ノート」だ。



『日記か?』



 違う。

 創作ノートだ。



『たいしたものじゃない』?

『そんなにびびるものじゃない』?



 とんでもない!

 このノートは俺が見る分にはいいんだよ。だがなぁ、他人が読むと誤解されるんだ!


 ノートを手にした人が「物語を書いていたのか、意外な趣味だな」と理解を示し、そっと閉じて終わりならいい。でもそうならない可能性が高い!



『犯罪まがいの内容なのか!?』



 違う!

 ノートに書き留めているのは奇談だ!


 俺には異能をもつ友人がいる。

 そいつは俺には見えないナニカを視たり、姿の見えないモノからちょっかいを受けたりする、いわゆる霊感がある人だ。


 目や耳、鼻など身体からだの構造は同じなので大きな違いはないはずだ。

 それなのに俺と友人では視えているものや聴こえるものが異なり、感じ取れるものが違っている。


 なぜ五感がこんなにも違うのか。

 霊感がある人は日常をどんなふうに過ごしているのか――。


 好奇心を刺激された俺は友人を観察するようになり、体験を聞くようになった。聞いた内容はメモをし、まとめたものがさっきから言っているノートだ。


 妙な文が書かれている怪しげなノート。それが何冊も本棚にある。書いた本人は意図がわかっているけど、事情を知らない他人から見れば「怪しいやつ」決定だろう?



『奇談を集めている時点ですでに変わった人』?



 おいおい、話は最後まで聞けよ!

 奇談をまとめていることにはちゃんと理由がある。


 俺は霊感がある友人の体験談をもとにホラー小説を書いている素人作家。

 ノートは小説のネタがびっしりと詰まっている宝箱なんだ。


 今のところ鍵付きの引き出しがノートの緊急避難先となっている。でも一時しのぎだ。


 急な来訪のたびにひやひやしたくないし、思いがけず入院することだって考えられる。根本的な対策が必要とわかっているけど、どう対処するか……。


 うーん……


  うーん……




 いい方法を思いついた!


 ノートの内容をWeb小説にし、写し終えたらノートを処分する。

 小説投稿サイトはネットにつながる環境があれば、どこからでも作業ができるから便利だ。それにノートの内容を文章化することで小説を書く腕が上がるかもしれない。


 おぉ! いいことだらけじゃないか!


 というわけで、小説ココは俺がこれまでノートに記してきた内容コトを書いていくことにする。


 先に言っておくが、俺はあくまで趣味で小説を書いている素人だ。

 だから物語に大きな期待はしないでくれよ?


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