合わせ鏡に眠れる龍は――いずれ、巡り逢うあなたの為に――

暮峰　円《くらみね　まどか》は平凡な会社員として、暮らす二十代の女性だ。

そんな穏やかな日々を過ごしている円に、一本の電話が入る。

『――お久し振りです円さん、何年振りでしょう。覚えていらっしゃいますか？　お父様の担当編集者だった田端です……お父様は円さんに最期の原稿、遺稿を読んで欲しいと願われていらっしゃいます』

円は田端の言葉を聞いた時、怒りと悲しみ、そして酷い惨めさが心の奥底から滲み出てきた。それは水に絵の具を垂らしたように、際限なく、円の心を濁らせて行く。

円は最初田端の電話を無視していた。だが、その電話は何度も何度も掛かって来る。嫌気が差して来た円は、遂に自らの自宅で田端と再会する事になった。

円は田端に一冊の上製本を渡される。

【鏡界】

題名はそう表記されている。
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