合わせ鏡に眠れる龍は――いずれ、巡り逢うあなたの為に――
高坂八尋
第1章 鏡界を越えた出逢い
*いずれ出逢うことを誓い*
*
「
落ち着いていて柔らかな、低い声。
そっと耳元で囁かれて、円は、その奇妙な表現に意識を寄せた。
円と見知らぬ彼はもう会っているはずだ。こうして側近くで声を聞いているのだから。
布団の温もりに抱かれたまま、聞き慣れない声に耳を澄ます。
円より遥かに大人の男性の声だった。まだ十にもならない円に、男の声だけでは、どの程度の年齢かは判らないが、親戚にいる大学生のお兄さん位なのではないかと思った。
身の危険は感じなかった。
なにより夢なのだとしか思わないのだし、またその声があまりに優しく、悲しげだったからだ。
「関わってはいけない。必ず後悔する事になる」
「……どうして、辛そうなの」
男が身動ぎしたのが解かった。
「気にするな、直に痛みは消えるから。もう、終わりだから」
円が寝ぼけ
薄っすらと若い男の顔が見えた気がするが、霞の向う側だった。
「いつか会えるのなら――守ってあげるから、待っていて。待っていてね」
嘆息の後に優しく頭を撫でられて、その少し硬い手のひらに、心がゆっくりと静かになる。
円は深い暗闇の中に沈んで行った。
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