湯気たゆたうさなかに

　手や口をだしたくもあり、だしたくなくもあり。頼りたくもあり、頼りたくなくもあり。
　人間なる生き物の中でも、親子とはまことに複雑なかかわり合いを持つ。まして、自分の人生がうまくいかないときには良くも悪くも相手の言動が幾重にも心の中で乱反射する。
　そんな葛藤や機微を踏まえつつ……湯気から得られる香りがくすぐったい。
　必読本作。