少年のつよさに感動。
- ★★★ Excellent!!!
あるヤングケアラーの物語と簡単にカテゴライズしてしまうには早過ぎる。
高校三年の岳人は両親が不在で、認知症の祖母の面倒を一人でみている。それがどれほど重い仕事なのかは経験した者でなければ想像がつかないだろうが、彼は「最初の頃は介護のキツさに泣きを入れた時もあったけど、それは不慣れだっただけで月日が経てば「これが日常」と思えるようになった。」と淡々と受け入れる。
わたしは、そのつよさ、やさしさに息を呑んだ。
祖母とのきれぎれの絆を結ぶような「緑のたぬき」の存在感に加えて、親友の鉄人との深い友情を垣間見せる「赤いきつね」のエピソードに胸を打たれる。
わたしは岳人を不幸だとは思わない。無論、岳人本人も自分が不幸だとは感じていないだろう。少年が大人になるために必要なものは不出来な両親ではなく、未来を切り拓く己自身だ。岳人の直向きな「つよさ」は、幼い頃から彼をいつくしんでくれた祖母の愛情が育んでくれたものだろうと思う。