ヤングケアラー、日に二度のカップ麺生活。それは果たして「悲惨」なのか?
- ★★★ Excellent!!!
この物語の主人公は高校生ながら、行方をくらました両親に代わって老いたお婆ちゃんの介護をし、「緑のたぬき」を食べる時間に癒しを感じています。
この「緑のたぬき」を食べる描写が本当に美味しそうで、一見辛い生活の中にも豊かさがある事を、読み手にもしみじみと感じさせてくれます。
お婆ちゃんと二人の生活にも、主人公はそれなりに満足しているようで、この感覚は実際に介護経験のある私にも「わかる」と思いました。
日に二回カップ麺を食べる生活を「悲惨」ではなく「背徳」と言ってしまう感覚。
貧困に慣らされている、とも言えるかもしれませんが、カップ麺を「ごちそう」と感じるのは私達にとってまさにリアルそのものです。
社会問題を取り上げつつ、外から見たら「悲惨」な現実の中の煌めきや温もりを掬い上げた、文学の王道を行く珠玉の作品だと思います。