最高の仲間に、あなたに出会って。色鮮やかに変わり出す少女の物語です。
- ★★★ Excellent!!!
舞台は高校の合唱部。
主人公は、等身大の高校生の女の子、詩葉。
彼女には、自分でもまだ気づいていないある「秘密」があった。
本作は、作者様の前作である『Rainbow Noise ~雪坂高校合唱部 ~』を、ヒロインの柊詩葉の視点で再編された作品です。
心のどこかに人と違う感覚がある、なにかがしっくりこない…「恋」がわからないことで悩み、孤独に葛藤する詩葉が、いかにして運命の人と出会い、人生に光を見出していくのかが語られるのが本作。
前作Rainbow Noiseは、合唱部を舞台とした『青春群像劇』という印象があったのに対して、
こちらはひとりの主人公の内面を深く掘り下げていく、『恋愛小説』の側面が強いところがみどころです。
目の前の問題や出来事に対して、ひとつひとつ真剣に悩み、まっすぐにぶつかっていく詩葉の姿は、こまやかな心情描写が素晴らしいため、感情移入しやすいです。
それだけに、詩葉の気持ちにシンクロするように胸が痛くなってしまうことも多々……!
でも、それだけになにかを達成したり、上旬させたときの喜びや、感動もひとしお。思わず詩葉ちゃん、頑張ったね!と、エールを送りたくなります。
メインキャラクターの陽向と希和の存在感もさることながら、登場人物がみんなとても魅力的で、他人への思いやりにあふれた子たちばかりです。
高校時代の友人なんてほぼ音信不通状態の私は、読みながら思わずこんな子と友だちになりたかった!こんな信じ合える仲間と部活したかった!と何度も思ってしまいました。
恋愛ジャンルの部門にありながら、同性愛というデリケートで一見難しいテーマを取り扱っている…ように感じるかもしれませんが、本作は高校生の部活ものとして、音楽に向き合っていく姿とともに綴られるので、身構えずともさわやかな読み味です。
合唱部経験者の作者様より紡ぎ出される、リアリティと躍動感にあふれたコンサートやライブシーンも、魅力のひとつ!
声を合わせる、というのは人間の持つ根源的な表現の手段。
詩葉と陽向が、そして希和が旋律を重ねるシーンでは、言葉にできない想いや感情が調和し合うようにも感じられます。
築き上げてきた仲間との信頼を、愛を胸に、詩葉がステージの先にみる景色とは。
気になった方は、ぜひぜひ読んで見てください。