様々な想いが交錯する異世界の物語

現代で暮らす高校生リキトは、月食の日に幼馴染の実久と共に異世界へ飛ばされてしまいます。
だが、そこにはリキトの両親がおり、物語が進むに連れてリキトの生い立ちがどんどん明らかに!

異世界と現代を繋ぐのは月。地球と異世界で進む時間の差を物理学で説明している設定もさることながら、様々な人物の想いがしっかりと描かれているところが大変面白いです。
少し破天荒で空回りをしてしまうヒロインの実久は、誰よりもリキトの力になりたいと大事な場面では大きな活躍を見せてくれますし、何より異世界で自分の生い立ちを知って混乱するリキトを支え続けてくれます。
リキトもそんな実久を大事に想っており、彼女の気持ちをきちんと理解している関係がなんとも素敵です。
リキトと実久の協力者であるゼファーも、また愛する人の為に大切なものを手放せる強い心を持った人物。敵であるダガーも実はとある人の力になりたかったりと誰かを想う強い気持ちが丁寧に描かれています。
エピソードごとに違う人物の視点で書かれているのも特徴で、キャラクターの心情に読者もしっかり共感できる所も魅力のひとつ。

民族統一の話や魔女狩りなどシリアスな世界観を通して綴られる人の想いの物語。
作者の近況ノートでは全話の挿し絵が載っておりますので、ぜひそちらとも併せて読んでいただきたい素敵な物語です。

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