異世界に精霊とんぼが飛び立つ頃に

凛々サイ

プロローグ

 プロローグ

 今宵は待ちに待った日だった。

 2022年11月8日、18時09分、月食開始。

 そんな夜に、お前は行ってしまった、あの世界へ。

 それも幼馴染の実久ちゃんまで連れてな。

 わしの隣で父親がワンワン泣いとるわい。

 わしもだがな。


 次に再び月が引き合う日は2025年、9月8日。

 その日が過ぎればこのだいそれた機械は破壊しなければならない。

 例えお前達が帰って来れなくとも。


 なあ、リキトよ、これはやはり運命なんだろうか。

 わしは未だに分からないのだ。

 どうあがいてもこうなる運命ならば、わしらは一体何であろう。

 だが、一つ分かることは、お前に会えて本当に良かったということだ。

 意味なんてないのかもしれない。

 けれど、お前に会いたい。

 それだけだ。

 それだけで何が悪い。

 意味がないと言われようともわしはまたお前に会いに行く。

 何度でも。

 それがわしにとっての望みだからだ。

 またきっと会える。

 例え、形は違っても。

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