第6話○ルーカー○

ガラスの案内看板と、地下にある入り口。

店の入り口の横の小さなショーケースに、

昨夜見たばかりの探知箱のレプリカが、陳列されていた。僕は、天宮の探知箱をポケットから取り出した。開店準備をしていたのか、入り口の前に立っていた黒服は、それを見て、急にシャンとした。

「何か、知っているんですか?」

僕は、聞くしかなかった。

「いや、何も、何も知りませんよ?」

店員は、僕から目を反らせた。

「でも、そのショーケースだって、レプリカですよね?」

明らかに動揺したくせに、コイツめ。

僕は、天宮のやつれようから、後がないと思い込んでいた。だから店員に詰め寄った。

店員は、小さな声で、店の中の奥の扉をトントトンと2回繰り返してから、開けるようにと、白状した。


僕は、店内に入り、念のため、ノックしないで扉を受けようとしてみた。開かない。固いドアだった。

そこで、トントトン、トントトンと2回ノックして扉のノブに手をかけた。

ノブは軽やかに回転し、扉もすんなり開いた。カラクリドアだった。


ようこそ、リターンワールドへ


扉の中に、声かけてきた蝶ネクタイに黒ベストの男が立っていた。部屋には、仕切られた6つのブースがあり、パネルがついていた。

「amamiya」は、Aで始まるからなのか、1番近いブースだった。


こちらへどうぞ

黒ベストに促されて、ブースに入ると、

今度は、カーキ色のフードを被っている男が、座っていた。

「占いをしにきたわけじゃない。ルーカーを探しているんです。もったいつけないで、会わせてくださいよ。」

僕は、心から焦っていた。

そりゃあ、そうだろ。天宮の命がかかっている。フードの男は、ささやくような小さな声で応じた。

「私が、お求めのルーカーですよ。」

僕は、彼に、机の端に置かれたクッションに、探知箱を置くように言われた。

「この空間での会話は、箱を通して天宮さんにも届きます。だから、音が割れないように、この座布団の上に乗せてください。」

僕は、天宮に外の様子が分かるというので、それにしたがった。

フードの影で、相手がどんな表情をしているのかわからない。

「ルーカーっていうのは、何なんですか?」

無理やりに気分を押さえつけて、僕は尋ねた。

「ルーカーは、属性見極め人ですよ。」

フードの男は、落ちついたまま、ささやいた。

僕の様子も、参考になるのだろうか。

今さらだが、僕は、平常心を意識した。

ルーカーだというフードの男は、僕に紙とペンを差し出した。

「名前と生年月日を書いてもらいます。ゆっくり丁寧に。ひらがな、カタカナ、漢字、英字。それぞれ綴って下さい。」

だから、僕は、それに従うしかなかった。



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