第7話○属性○

紙に書く、そんな行為が終わると、男はそれをもって消えた。

黒ベストの男が、そこに立っている。

「少し、時間がかかるかもしれませんね。」

彼がそう言った。

「どのくらい?」

僕は、とにかく、天宮が心配だった。

「天宮さん、昨日のヒントは、久しぶりで、感が鈍ったんですか?駄作でしたね。」

黒べストの男は、その場所から、箱に向かって、話しかけた。僕は驚いている。

彼は、それから、僕に向かって、こう言った。

「今日のヒントはなかなかでしたから、0時過ぎに箱を開ければ、今の心配はなくなりますよ。無属性さん。」

「どういうことだよ。」

「命がけというくらいですから、確かに吸われているのは、生命エネルギーです。ご心配になるのも、無理はありません。しかし正しく行動すれば、与えられるのも生命エネルギーです。そういうことですよ。メティティというのは、生きるために必要なエネルギーですから。」

「よくわからないんだ。僕は、メティティという言葉すら知らずに生きてこれたから。」

すると、黒ベストは、ふむ、と頷き、銀の懐中時計をちらりと見て、ブースの中に一歩踏み込んだ。片腕を握ってギャルソンの待機ポーズをとると、僕にウインクした。


演出過剰じゃないか、と思ったけれど、僕はそれを声には出さなかった。

「メティティは、生まれつき定められた命の性質の大別です。血液型もABO式なら四種類有ります。メティティは、血液型のように、親子でも合わないこともあります。最大の特徴は、輸血のように分け合えないということでしょうか。そして、命のエネルギーですから、知らないことは、とても危険です。裏社会に適合するメティティの人は、表にいると、生き辛さと違和感を感じ続けます。浮いてしまうわけです。」

へぇ。やっとわかってきた。

生気を血液型のように分けたってことか。

「なぁ、メティティっていうのは、親子でも合わないってどういうこと?」

「1番屈託ないのが、光表の属性の方々です。この方々は生まれてくる子供も光表なのです。光裏、闇表のご夫妻から、光表や裏闇の子供が生まれると、養子の話や、居住の移転が検討されます。学校の敷地は、全ての居住区に接点を持つよう設計されていますが、生命エネルギーですから、属性による侵略が起きないように、配慮されます。裏闇の一族だと、殺生も仕事になりますから、人と深く関わるのを避けるかたも多いんですよ。」

黒ベストの男は、そう言った。

僕が、親を知らずに生きてきたのは、そのせいなのかな。

漠然と、そう思った。


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