第8話○ツインメット○

「あなたは、自分のメティティを知らなかったそうですね。」

黒ベストは、そう言った。

「光表の女性が、裏闇の属性の子供を妊娠すると、相反の値が強すぎて、命を落とすこともあるそうですよ。裏闇の女性は光表の子供を妊娠しても、そんなことはないそうです。もしも、あなたの母親が光表であった場合、あなたの父親が、裏闇であったかもしれませんね。」

この話は、後で、僕の記憶と結び付いて、僕のルームメイトを悩ませることになる。

今は、とにかく、天宮の為にも、早く僕のツインメットを探し当てる必要があった。

「あんたの属性は、なんなのさ」

僕は、イライラと黒ベストに八つ当たりした。よくないことではあるが、押さえきれなかった。

黒ベストは、おどけたように笑った。

「こんなところにいるのですから、普通のメティティではありませんよ。でも、それは、あなたも似たようなものなのですが。」

そして、また、銀の懐中時計を見て、ブースからでていってしまった。

不愉快なことを言われて、撤退したのかも知れなかった。


無駄にも思えるおしゃべりの後でも、ゆうに1時間は待たされたと思う。

戻ってきたルーカーから、僕は2冊のノートを渡された。

「あなたの属性は、表闇でした。あなたのツインメットは、光裏です。男性で、イベンターでした。あなたは、以外と落ち着いた生活を約束されているようですから、虚飾の世界は、向いていませんね。それと…」

ルーカーは、まじまじと、僕の顔を眺めた。

「いえ。タイミングは今ではないようなので、いずれまた、お会いするでしょう。私達は。あなたの用事は、これで解決したはずですが、他に何か、お求めはありましたか?」

「ないさ。ありがとう、じゃあ、僕はこれで。」


僕は、探知箱をわしづかみにして、不思議な店を後にした。

僕の属性は、表闇。

それがわかっただけでも、心が1つ軽くなった。


寮に戻ると、ルームメイトは留守だった。

真っ暗になっても、日付が変わっても、戻らなかった。僕は、彼を待っていたのだが、睡魔に勝てず、うつらうつらとそのまま、眠ってしまった。


「天宮さん!」

真っ白い空間で、繋がれた天宮の顔色ももとに戻っていた。服も豪華なガウンになっている。ひと安心した。そうか、夢の中だから、会えるのかもしれない。僕は思った。

「おお、坊主。頑張ったなぁ。解決までの時間が短いと、残り時間が、ボーナスになるんだ。この年齢では、なかなかきついギャンブルだが、時のメティティを持つものは、数が限られているからな。なるべく頑張って、楽をさせてくれ。」

「天宮さん、僕、ルールを知らなくて、ホントにすいません。とにかく頑張ります。」


ツインメットは、光裏。

回りのスタッフが、質の高い仕事をしている。

僕の方は、明るいトラブルメーカーかも。

懲りないやつキャラかぁ。意地悪ぎみなんだから。


不意に、流行りのバンドの映像が、通りすぎていった。

夢は、何でもありだよね。


僕は、ガバッと跳ね起きた。

ノートを見ると、そこに、夢に出てきたバンドがピックアップされていた。

これに会いに行くって?

無理だろ!

このバンドは、今が売り出し中で

カネにもならないちゃちいぼくちゃんに

会える余裕もあるはずがない。


ウキウキすると、すぐに次の山がそびえ立つ。だけど、負けるもんか。僕は、僕の存在感を、取り戻して見せる。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る